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【徹底解説】MIDIで打ち込みしたピアノソロの音作りの具体的な方法【ピアノ音源選びが大事】

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先にまとめ

  • まず最終的なゴール(市販の曲を聞きながら)を考える、イメージする
  • できれば)リアルタイム入力する
  • プラグインの効果を理解した上で正しく使う

こんにちは、Keigo (@type00k) です。

以前からずっとピアノソロの音を市販の曲並みのクオリティにしたいと思っているのだけれど、近所のピアノスタジオで何度録音しても満足いくクオリティにならないのが嘆かわしい。

ありゃあ相当な知識と技術と機材が必要なんじゃないかと薄々感じ始めた僕は「だったら質の高いピアノ音源を使ってクオリティを極限まで突き詰めればいんじゃね?」という発想の元、教えてくれるツテもないので一人で音作りに没頭するようになった。

で、数年かけてついにそこそこ満足いくクオリティになった(はず)なので、今回はMIDIの打ち込みによるピアノソロの音作りとミキシング、マスタリングの方法を僕の独断と偏見で紹介したい。

以前紹介したIvory IIのレビュー記事の拡大版みたいな感じ。

Keigo

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目標はこのくらい

今回はこのレベルの音を目標にする。

市販の曲並みかはともかく、十分聴けるレベルの音になってると思う。これはMIDIでリアルタイム入力して、ピアノ音源で鳴らしている。他にもプラグインを使ってるのでそれも紹介する。

ちなみに曲は久石譲『Spring』のピアノソロ。進研ゼミの曲。大好き。

久石 譲
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基本手順は5つ

ピアノソロの音作りの基本的な手順は以下5つ。

  1. MIDIをリアルタイム入力する
  2. リファレンス曲(お手本曲)を分析する
  3. アナライザーを正しく使う
  4. ピアノ音源とプラグインで音を作る
  5. ラウドネスメーターを使って音圧を調整する

順番に解説したい。

① MIDIをリアルタイムで打ち込む

ピアノソロの場合は、できるだけリアルタイムレコーディグでMIDIを打ち込んだほうがいいんだ。ベロシティやペダルは手打ちではどう頑張ってもリアルにならない。

だから少しずつでもピアノを練習したほうがいいと思う。

以下の記事で初心者向けに分かりやすく解説してるから参考にしてほしい。

ついでに、リアルタイムレコーディグのコツは以下3つ。

  1. ノートオンとオフのタイミング
  2. サステインペダル
  3. ベロシティ

そもそもMIDIを打ち込む時点で気をつけたほうがいいこともある。

その全部を説明するとこの記事が書けなくなる別の記事で解説してる。

② ピアノ音源で音作り

次に、ソフト音源側で基本的なピアノの音作りをする。

今回使うピアノ音源は以前紹介したIvory II Studio Grands。

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別にどんなピアノ音源でもいいんだけど、できるだけリアル志向のピアノ音源がいい。

Ivory IIシリーズ以外ならSynchron PianosHans Zimmer Pianoあたりもかなりクオリティが高いと思う。

リファレンス曲を用意するのが大事

参考・お手本にする曲のことを「リファレンス曲」と言う。基本的にはプロが作った市販の曲を買って用意したほうが良い。

リファレンス曲はプロのエンジニアが音の処理をしてるので、ほぼ100%正しい音作りの処理をしているわけ。参考にしない手はない。

プロでもミスはする

「ほぼ」と書いたのは、以前僕が買った市販の曲が素人でも分かるくらい音割れしてたことがあったからだ。「プロでも音割れのミスをするんだなあ」と純粋に衝撃だったから。

将棋のプロが試合で二歩(ルール違反)をやってしまうみたいな感じだろうか。絶対やっちゃダメなミスだ。

ちなみにその曲はアニメ「Charlotte」のOP『Bravely you』のCD版。レビューにもあるけれど、メチャクチャ音割れしている(DL版は解消されている)。

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なお、僕は麻枝准×Liaの曲は大好き。

今回は久石譲『Spring』をそのままリファレンス曲にする。

オレンジ色がリファレンス曲で、緑色が僕がリアルタイム入力したMIDIトラック。

今現在の僕のリファレンス

今現在(2022年)の僕が目標にしている音は、Sławek Jaskułkeさんの『Kind Me』だ。

特徴は何と言っても低音域から高音域まで非常に豊かなレンジが確保されていることだ。パワー溢れる演奏で低音が持ち上がってくるけれど、あくまで心地良いレベルの音量に抑えられている。それでいて全体の音量のダイナミクスはしっかり確保されている。とてもバランスが良い。

打鍵のアタック感、パンの広がり具合、音像、距離感、重心の低さ、どれを取っても絶妙だ。特にリバーブがうっとりするほど心地良い。カラッとした空気の感じも、哀愁漂うこの楽曲に完璧にマッチしている。

ただし、YouTubeへの投稿は2014年と古いことかつ動画のアップロードによる音質の劣化があると思われる。原音はもっとクリアだと思う。

今の僕なら、もう少し現代的なシャープな音にしたい。低~中音域は十分すぎるほど綺麗に録音されているので、もう少しピアノのメロディをハッキリ聞こえさせるようなバランスにすると思う。100~300Hzあたりをカットして、6,000Hzあたりを持ち上げたい感じ。

ということで、この音源を一回りクリアにできたら僕の中で100点満点だ。しばらくはこの曲を目指していきたい。

それ以前に、曲と演奏が良すぎる。

ピアノの基本の音を作る

次に、ピアノ音源側で基本的な音の傾向を作り込んでいく。

流れとしては、ピアノ音源側で残響が少ない(ドライな)ピアノの音を作って、あとから他のプラグインでリバーブやディレイなどの残響を付け加えるイメージ。

今回Ivory IIで設定したパラメータは以下のとおり。Ivory II Studio Grandsはかなりドライにできるんだ。とはいえこのあたりは好みの部分も大きいから各自調整してみてほしい。

Ivory II Studio Grands

「Stereo Width」と「Sympathetic Resonance」以外はプリセットのままにした。

各種パラメーターの意味は別の記事で解説してる。

一度wavファイルに書き出す

このままイコライザーやリバーブとかを作り込んでもいいんだけど、Ivory IIはソフトが少し重いから何度もMIDI経由で再生していると途中で再生・停止がしにくくなる可能性がある。

一応今使ってるPCは自作で、DTMするくらいなら十分スペックはあるんだけどね。

ということで、僕はこの段階でドライになったピアノトラックをwavファイルに書き出すようにしてる。wavファイルを再生・停止する方がPCの負荷が軽いんだ。

いつも書き出す設定は特に理由がなければ48kHz / 24bitのwavファイルにしてる(この記事では44.1kHz / 16bitにしてる)。

ついでにオーディオインタフェースの負荷を下げるためにバッファサイズも最大にすることが多い。

今現在(2021年)使ってるオーディオインターフェースはMOTU M4。音がめっちゃ良くて気に入ってる。

Cubaseの場合はMIDIトラック上で右クリックすると「Render in Place」という項目からwavに書き出せる。

緑色のMIDIトラックが録音されて、青色のwavファイルができた。

まだ何も処理をしてないから当たり前だけど、現時点ではオレンジ色に比べて青色の波形が小さい。

wavファイルの解析は必ずチェックしよう

一度さっきの青色の波形の情報をチェックしてみる。

これは主に音声ファイルの音量の大きさの状態が見られるんだけど、これは後々CDを作ったりYouTubeやiTunesなどのサイトにアップしたりするときに使える指標になる。

Cubaseだと左上のツールバーからオーディオ(Audio)→ 解析(Statistics)でオーディオファイルの各種数値が出せる

僕はCubaseの言語を英語にしてるからこんな感じだけど日本語だと表記が違うかもしれない。

解析

見るべきところは、画像下側の「EBU R 128」以下の部分。

特に注目する値は以下の4つ。細かい意味は後で説明するけど最終的にはすべて理解したほうがいい。

  1. Max. Momentry Loudness…ラウドネスの最大値。今回は-16.03 LUFS
  2. Max. Short-Term Loudness…3秒単位のラウドネスの最大値。今回は-19.19 LUFS
  3. Integrated Loudness…ラウドネスの平均値。今回は-23.70 LUFS
  4. Max. True Peak Level…ピークの最大値。今回は-5.89 dBTP

ここで、この後の作業のために僕はいつも精神衛生上の理由でCubaseの新規プロジェクトを作ってる。このまま進めても良いんだけどね。

③ アナライザで音を「見る」

次に、リファレンス曲を参考にしながら音を作り込んでいく。

音を作る時は、基本的に以下3つに耳を傾けると良いと思う。

  1. 音の質感
  2. 空間
  3. 音量の大小

原曲『Spring』は生ピアノで収録されてるから全く同じ音にはならないんだけど、参考になりそうなポイントだけを真似ていく戦法。

その前に、音作りに役立つ「スペクトラムアナライザー」を必ず用意する。なんか手からめちゃくちゃ強いビーム出そうな名前。

スペクトラムアナライザーは必須

音作りを始める前には、音を可視化できるプラグイン「スペクトラムアナライザー」をマスターチャンネルに挿したほうがいい。

人間の耳というのは案外いい加減なんだ。たとえば、ライブハウスで聞く爆音は相当うるさいはずなのに1時間もいれば普通の音量に感じてしまう。

だからそういう耳の特性を補正してフラットな視点に立つという意味で目も使って音作りをしていくんだ。これでより正確に早く自分の理想の音に近づくってことを僕は早く知るべきだった。

で、今回使うアナライザーはVoxengoのSPAN。波形が見やすくて使いやすくて高機能で無料。

Voxengo SPAN

公式サイト:Voxengo SPAN

スペクトラムアナライザーを使うメリットとその理由

スペクトラムアナライザーの細かい話は、えき(@eki_)さんのブログ記事が参考になる。有料級。

世界で最も詳しく書かれてると思う。

アナライザーは事前の調節が大切。正しい調節をしてないアナライザーは役に立たないから、まずはアナライザーを調節しようとのこと。

ってことまず、ピンクノイズだけを鳴らしてSPANの初期設定をする。ピンクノイズは全周波数帯域でフラットになるから、まずアナライザーでピンクノイズがフラットに表示されるように調節していく。

Cubaseだと付属の「TestGenerator」というプラグインでピンクノイズを発生させることができる。

TestGenerator

右から2番めの「PINK」がピンクノイズ。デカイ音がなるからスピーカーの音量を下げよう。

で、SPANの右上の歯車の記号をクリックして詳細設定画面して、以下のようにピンクノイズがフラットに表示されるように調節していく。

Voxengo SPAN

設定は以下のとおりでピンクノイズがほぼ水平になった。

Voxengo SPAN

次に、リファレンス曲は最大ピークが-6.0 dBになるようにボリュームを下げる。これは一番最後のマスタリングの段階で、ある程度ヘッドルームに余裕があった方が音圧調整などがやりやすいからってのが理由。リファレンス曲は既にマスタリングされているけど、その前の段階の音量レベルに揃えてみようという発想。

リファレンス曲の波形の一部を見てみる。

Voxengo SPAN

100Hz以下から下がっていて、500Hzあたりにピークがある。で、1000Hzから緩やかに右下がりになってる。

という感じで、スペクトラムアナライザーを使うと耳で捉えられなかった部を目で見ることができる。音の可視化だね。

もちろんリファレンスと同じ波形にする必要はないから、あくまで補助ツールとして使うといいと思う。

音作りの手順どうするべきか?

音作りやミキシング、マスタリングは手順や方法が山のようにあるんだけど、今回はざっくり以下の順に紹介する。

  1. イコライザー&コンプレッサー
  2. リバーブ&ディレイ
  3. リミッタ

ただ音割れを防ぐという意味でも先に最終段にリミッターを挿したほうがいい。

Waves L2 Ultramaximizer

ピーク(OUT CEILING)はとりあえず-1.0 dBがオススメ。

④ イコライザーで自然な音色へ

イコライザーは、特定の周波数を強調(ブースト)または減衰(カット)させるエフェクト。

正しい使い方があってないようなものだから正直突き詰めるとかなり難しい。

イコライザーの本来の意味と使い方

日本語に意訳すると「平衡化」。 もともとは1920年代に映画館の音響システムを原音に近づける補正をするために開発された回路らしい。

「マイクで収録された音」と「実際に聞こえる音」にはどうしてもギャップがあるから、イコライザーを使って原音に近づけることが本来のイコライザーの使い方みたい。

さっきのIvory IIのドライの音は少し奥まっている(ピアノが部屋の奥のほうに配置されすぎている)からピアノを前に出していきたい。

ここからは具体的なプラグインを使って説明していく。

Waves Scheps 73でブースト

今回は、Waves Scheps 73を使う。これはブーストして使うと良い感じに艶が出るイコライザー。

3つのツマミを設定するだけだから直感的で操作しやすいのも特徴。

Waves Scheps 73

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左側のツマミの特徴はざっくり下記のとおり。右側のつまみは何もしない。

  1. HIGH……ブーストすると部屋の空気感が出る。3dBを超えてくると生ピアノとしてはわざとらしい感じ
  2. MID……4.8kHzに設定してブーストするとピアノが前面に出る。これも1~3dBで十分といった感じ
  3. LOW……リファレンス曲を参考にしながらお好みで調整。35Hzを+5dB

上の画像のように設定するとこんな感じ。ピアノが少し前面に出て華やかな音になった。

ちなみに、やりすぎて全ブーストするとこんな感じ。

イコライザーはつまみを回すとすぐに音が変わるから始めのうちは夢中になってやりすぎちゃう。注意。

初めのうちは、あくまでイコライザー本来の使い方の「録音された音を実際に聞こえる音に近づける」ことを意識して調整するといいかも。

iZotope Neutronで気になる部分をカット

さっきブーストした後に、気になった音域をカットする。

具体的には左手のアルペジオ部分と弦の鳴りが気になるからカットしたい。

ここのイコライザーは何でもいいけど定番のNeutronが操作しやすいから使ってる。

特に「Alt + 左クリック」で特定の周波数だけを聴けるというのが楽でいい。

iZotope Neutron

今回は350Hzと1000Hz周辺の2点を2~4dBくらいカットした。あくまで耳で聴いた感じだから数字自体に意味はない。この後、追加でさらに100Hz付近の低音域もカットした。

イコライザー適応前と後を聴いてみる。00:11までが書き出した素の音、後半がイコライザー適応後。

後半は音が前面に出て華やかになった。この段階だと些細な変化だけど、最終的な仕上がりはかなり変わってくるんだよね。

というわけで、ドライの音作りはここで終了。

次はリバーブとディレイで空間を作っていく。

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