こんにちは、Keigo (@type00k) です。
YouTubeでMIDIのピアノ演奏動画をアップして何年か経つんだけど、毎日のようにDAWとにらめっこしてると良い打ち込みと悪い打ち込みの特徴が嫌でも分かるようになってくる。
で、この前僕のInstagramやTwitterのDMで「どうやってMIDIを綺麗なピアノの音にしてるの?」という質問があったから、今回はDAWでリアルなピアノ演奏にするためのMDIの打ち込みのコツを紹介する。
目標はこのくらい
今回の目標は、新海誠「秒速5センチメートル」のサントラより『想い出は遠くの日々』。個人的に大好きな曲。
この動画はMIDIをCubaseでリアルタイム入力してソフト音源で鳴らしてる。
手順はこんな感じ。
- ピアノ専用のサンプリング音源を使う
- MIDI入力&調整をする
- リバーブとディレイを設定する
「秒速5センチメートル」はすげー良いアニメだからぜひ見てみてほしい。一応プライムビデオで見られる。




リアル志向のピアノ音源を使う
最終的にリアルなピアノの音色を目指すならリアル志向のピアノ音源が必要なんだ。というか、ここがリアルさの鍵になってくる。
オススメはIvory IIシリーズ
ピアノ音源は星の数ほどあるけど、個人的にオススメはIvory IIシリーズ。定番だし初心者でも使いやすい。




ちなみにIvory IIは宇多田ヒカルさんも使ってるらしい。
Ivory II という音楽ソフトです いろんなグランドピアノの音が入ってるの。 RT @YUKi_i_i_i: 11枚もディスクあるソフトってどんなソフトなんですか!?
— 宇多田ヒカル (@utadahikaru) 2011年7月22日
Ivory IIの選び方と使い方は下の記事で解説してる。




補足:DAW付属の音源が勝てない理由
DAW付属の音源やKompleteなどのマルチ音源にもピアノの音色はあるんだけど総合的な表現力はどうしても専用のピアノ音源には勝てない。
論より証拠。聴いてみよう。参考曲の01:01~01:19の聴き比べ。この曲に使えそうなピアノの音色を選んでみた。




ゲインを揃える以外のプラグインは一切なしで、全く同じMIDIデータ。
最初のゆったりしたフレーズと16分の早いフレーズの違いに注目すると分かりやすいと思う。ちなみにこの曲はルバート(テンポが伸縮する)で打ち込んだから小節線は無視で。
① Cubase付属「Bright Acoustic Piano」
なんかぺちゃっとした感じの音色。奥行き感が感じられない。
② Cubase付属「Hard Grand Piano」
いかにもデジタルという感じ。小さい音がないからNG。ピアノソロは小さい音が命。
③ Cubase付属「Compressed Rock Piano」
わりと奥行き感はある。ただ音量のダイナミックレンジが狭い。ピアノソロはダイナミックレンジも命。
④ Komplete「Alicia’s Keys」
マルチ音源「Komplete」のピアノ音源。けっこう上品な音で全然使える。ただ音色が少し細いしかな、もう少し豊かさがほしい。
⑤ Ivory II「Studio Grands」
グランドピアノのサンプリング音源。ダイナミックレンジが広くて奥行き感も良い。リバーブがないから音がこもってるよう聞こえるかもだけど、こういうのが音作りで化けるダイヤの原石なんだ。
ということで、音源ごとに音色の方向性が違うことが分かってもらえたと思う。やっぱり専用のピアノ音源は強い。
僕も以前は付属音源とかマルチ音源のピアノの音に対して、プラグインを駆使して音のチープさを解決しようとしてたんだけど後になって完全に時間の無駄だと理解した。音は素材の良さが9割。有料音源を揃えよう。
補足:他のピアノ音源でオススメは?
Ivory II以外で僕が気になった音源を軽く3つ紹介しておく。どれも音が素晴らしい。
① SYNCHRON PIANOS




SYNCHRON PIANOSは10以上のマイクポジション、1鍵あたり最大4200サンプル以上という数の暴力。サンプリング音源の究極。
めっちゃリアルだけど、その分PCもそれなりのスペックも求められる。
あと音作りではパラメーターが多すぎて初心者には扱いが難しいかもしれない。
販売サイト:SYNCHRON PIANOS
③ HANS ZIMMER PIANO




ハンス・ジマーの要望を叶えるべく制作されたピアノ音源。容量は211.2GB。ハリウッド音楽に使えるくらい重厚なサウンドが特徴。
説明欄にある「60本にも及ぶマイク・シグナルが~」という部分で頭が痛くなって読むのを止めた。頭おかしい。
ただ、弦のせいか高音域があまり良くない気がする。
販売サイト:HANS ZIMMER PIANO
② Pianoteq
モデリング音源のPianoteqあまりにも有名。
ピアノの細かいニュアンスが上手く再現できる。
容量が40MBくらいしかないないのが魅力。
サンプリング音源……グランドピアノの生の音を一鍵一鍵録音し、それを再生する。リアルだけど容量が大きい。
モデリング音源……録音したピアノ音のデータを加工し、アコースティックピアノの発音の仕組みを計算して音を作り出す。容量が少ない。




MIDI入力のコツ
MIDIはリアルタイムレコーディングするのがベスト。ピアノソロをマウスでぽちぽちするのは万里の長城を完成させるくらい無謀だと思う。
ピアノは頑張って練習しよう。下の記事で独学の方法を解説してる。できれば習いに行ったほうがいいけどね。




リアルタイムレコーディングのポイントはこんな感じ。
- タイミングとデュレーション
- サステインペダル
- ベロシティ
順番に解説したい。
① タイミングとデュレーションが最初の壁
ポイントの一つ目は、MIDIを打ち込むタイミングとデュレーション(長さ)が大事だということ。
たとえば、実際にピアノ演奏する場合は、すべてのノートオンとノートオフのタイミングが完全に一致することはまずない。同時にコードを弾いたときでも実際にはどの指も微妙にずれる。




すべてのノートオンとオフが一致してて明らかに違和感がある。さすがにIvory IIでも機械的に聞こえる。
一方、リアルタイム入力だとこんな感じ。




より自然な演奏。最初のコードは同時に弾いているつもりだけれどやっぱり微妙にずれる。こういう細かな打ち込みがリアルさを感じるポイントになってくる。
ちなみに2番目と3番目のコードはアルペジオだからノートオンは意図してずらしてる。
また以下のように、次のノートと完全に連結することもほとんどない。




もちろんスラーなどでメロディを滑らかに演奏する場合はノートが重なることもある。まあペダルで誤魔化すこともできるけど、ピアノがちゃんと弾ける人にはバレる。
Ivory IIとかのピアノ音源だとノートオフで鍵盤のリリース音が鳴るから、やっぱりリアルタイムに入力するほうが自然になる。




もしピアノが弾けないなら、最低でもノートオンのタイミングが不自然にならない程度にずらして打ち込むと良いと思う。それができるようになったらノートオフをピアノの運指から考えるといい。
打ち込みくさく聴こえる原因は音源の品質を除いてほとんどがノートオンなので。
② サステインペダルでピアノらしさアップ!
サステインペダルを踏みながら鍵盤を弾くと音が長く持続する。これもリアルなピアノ演奏では不可欠。
実際のピアノ演奏だと「その作品を活かすも殺すもペダル次第」と言っても過言じゃないくらいペダルは奥深くて繊細なんだ。まともに習得しようと思ったら何年もかかっちゃう。
でも、とりあえず以下の2つ覚えてけば大抵の曲はそれっぽくなるから安心してほしい。
- ノートオンの後、ベース音のノートオフの前でサステインをオン
- 次のコードのノートを弾いたらオフ
これの繰り返し。
下の図の縦の青い線がメロディ(トップノート)のノートオン。赤い線がベース音のノートオフ。
- ペダルは分かりやすくオン・オンのみ
- 弱起の曲だから最初の2音(シ ド#)のメロディはペダルは踏まない




オレンジで書いた矢印の間でサステイン(cc64)をオンにして次のコードが鳴り始めたらオフにすればOK。




かなり大げさに失敗させた。とりわけ、サステインのオフが早いところ(ピンク)は音が切れるから誰でも分かる。
サステインのオンが早いと弦の鳴りが響いちゃう。オフほど目立たないけど注意したいところ。
Goodマークはトップノートに辿り着く前だけど問題ない。
赤いBadマークはオンとオフが重なるよくあるミス。「スナップオン(Cubaseだとショートカット:J)」しながらサステインを調整するとやらかすから注意。
「これでどんな曲も解決」というわけにはいかないけど大抵はこのやり方で上手くいくと思う。




③ ベロシティの調整が攻略の鍵
ベロシティは「鍵盤を押す速さ」を表して、1~127の数字で表す。事実上「音の大きさ」を表す。0だとベロシティオフ。
正直、ベロシティは感覚の部分が大きいから初心者にとってはベロシティの調整が一番難しいと思う。
逆に、このベロシティの調整が上手くできれば一気にリアルな演奏になる。僕もかなり気を使ってる。
さっきの「タイミングとデュレーション」は目で見て判断できるから誰でも調整できるけど、ベロシティは耳で判断するから簡単にはいかない。
普通のピアニストはベロシティなんぞ知らん
たとえば、本物のグランドピアノでできるだけ音量を揃えて同時に「ド・ミ・ソ」と弾いたときに、どの音が一番大きい音(ベロシティが最も大きくなる)になるか?
それは、ピアノ歴20年の僕にも分からない。
ベロシティを考えて弾いてるわけじゃないからね。運指や音域にもよるし、そもそもリアルタイムレコーディングをした後のベロシティの数値を見て始めて分かる。
他にも、デクレッシェンド(だんだん弱く演奏する)の記号があったとき、後半のノートのベロシティが必ず小さいかと言われると、必ずしもそうではなかったりする。困ったなあ。




こういうのは正解が特にあるわけじゃないんだけど、感覚とか経験がそう演奏させてるんだよね。
そもそも普通のピアニストはベロシティなんぞ知らん。
僕(というかピアノを弾く人)ができるのは、打ち込みしたMIDIデータを再生しながら「このノートのベロシティが高すぎる、低すぎる」という判断くらいで、ゼロから一つひとつリアルな演奏になるようにベロシティを調整することはかなり難しい。体力と集中が持たない。
できたとしても多分物凄く時間がかかる。それならもう一度リアルタイムレコーディングしたほうが早い。
初心者はヒューマナイズで解決
上手く打ち込めない場合はヒューマナイズ機能を使うのもあり。むしろ初心者はそうした方が上手くいくと思う。
たとえば、Cubaseの場合は、上部メニューから「MIDI」→「ロジカルエディター」もしくは、トラック左側のインスペクタウィンドウ「MIDI モディファイアー」にベロシティをランダマイズさせる項目がある。
また、打ち込みに使うMIDIキーボードの鍵盤の作りによってはベロシティの幅に対応出来ない商品がある。特に安いキーボードだと小さい音(低いベロシティ)が出せないことが多い。
リバーブとディレイを付ける
リバーブとディレイは空間の広がりや奥行きを表現するのに使う。ピアノソロには欠かせなくて、これの設定次第で曲がマジで化ける。
下記Cubaseのミキサー画面。ここから調整していく。




リバーブはWavesのIR1やH-Reverb、Rverb、FabfilterのPro-Rなど、ディレイはH-delayやCubase付属のものを使うことが多い。
プラグインバンドルはWaves Horizonがコスパ高いと思うからオススメ。初心者ならしばらく困らないはず。




最初に部屋の大きさを決める
最初にコンボリューションリバーブのIR1でピアノの部屋の大きさを決める。大まかな印象を決める方針。




今回はプリセットの「Knight Halls」を選んだ。
下手にパラメータをいじると悪くなるから基本的にプリセットのままで問題ないんだけどReverb TimeとEarly Reflectionだけは調整してる。いつもは1.0秒~2.0秒の間が多い。今回は1.6sにした。
このリバーブだけでもかなり印象が変わる。
リバーブをもっと豊かにする
もう少し豊かな響きが欲しいときはH-Reverbを足す。これもプリセットを元に作る。




より濃密なリバーブになった。楽しい~。
この2つのリバーブはフェーダーのバランスやSendで送る量を調節することで良い感じに仕上げてる。このあたりは感覚になるんだけど、やはり市販の曲を聴き込んで研究するのが近道だと思う。
ディレイで空間を仕上げる
ディレイでさらに空間を仕上げる。
ディレイもリバーブと同じ空間系。リバーブのざっくり版がディレイ。ディレイを深く掛けるとリバーブになるといったほうがいいかな?




強いてコツを言えば、ディレイがリバーブより外に行かないこと。
部屋にピアノが置いてあるとして、イメージするとこんな感じ(左右のパンの話ではないよ!)。
壁 – 空間 – ピアノ – 空間 – 壁
これをリバーブとディレイに置き換えると、
リバーブ – ディレイ – ピアノ – ディレイ – リバーブ
ピアノと部屋の壁までの距離を繋ぐのがディレイといった感じ。
これで原音とリバーブ、ディレイの3つ(もしくは4つ)のトラックができた。
最後に大切なのはボリューム調整。特にディレイは聴こえるか聴こえないかというレベルで十分。音量の小さいセクションではディレイは目立っちゃうからね。
現時点でのミキサー画面はこんな感じ。




今回はバラード系だからわりと深めに掛けてる。雰囲気が出るから大丈夫。
あとは軽くコンプレッサーやイコライザーなどを使って微調整して自分好みにすればOK。
YouTubeなどに投稿する場合は、動画編集をして完成。
YouTubeメンバーシップ限定動画
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まとめ:自分好みに仕上げよう
結局のところ、音楽はどこまでいっても経験が物を言う世界だと思う。失敗という言葉はネガティブな印象があるけど「上手くいかない方法が分かった」とも言える。
僕もここ何年で数えられないくらい失敗してやっとコツを掴んだというレベルだから、少しずつ経験を積んでいくことが大切だと思う。
というわけで、以上です。読んでいただき、ありがとうございます。