MIDIの打ち込みをリアルなピアノ演奏にする方法と具体的な手順
DTMのMIDIの打ち込みでリアルなピアノ演奏にするにはどうすれば良いのか? というメッセージを頂いたので簡単にですが、答えてみます。
参考曲は以前YouTubeに投稿した、秒速5センチメートルのサントラより「想い出は遠くの日々」です。
これはMIDIをリアルタイムで打ち込み、ソフト音源で鳴らしています。今回はこのレベルを目標にします。
リアルなピアノ演奏のにするにはどうすれば良いのか?
- ピアノ専用のサンプリング音源を使う
- MIDIデータを調整する
- リバーブとディレイを設定する
基本的にポイントはこの3つです。
イコライザーやコンプレッサーなど細かい設定や音作りなどは書き出したらキリがないので、ここでは無視しています。
以下、順番に解説していきます!
1. ピアノ専用のサンプリング音源を使う
結論から言うと、「Ivory II」を買いましょう。プロ、アマ問わず多くの人が導入している人気かつ定番のピアノ音源です。
人気で定番ということは、もしトラブルが起きでもネットに対処法がたくさんあるので安心できます。
個人的に、Ivory IIがあればリアルなMIDI演奏の6、7割が達成できているも同然だと思います。おめでとうございます。笑
ちなみに、Ivory IIは宇多田ヒカルさんも使用されているようですね。
Ivory II っていう音楽ソフトです いろんなグランドピアノの音が入ってるの。 RT @YUKi_i_i_i: 11枚もディスクあるソフトってどんなソフトなんですか!?
— 宇多田ヒカル (@utadahikaru) 2011年7月22日
他にはデモを聴く限り、VIENNA社の「YAMAHA CFX」も良さそうです。なにせ、10のマイクポジションで1鍵あたり最大4200サンプル収録されている究極までに変態的な(良い意味で)ピアノ音源です。
▼YAMAHA CFX
https://sonicwire.com/product/41160
DAW付属の音源や、Kompleteなどのマルチ音源にもピアノの音色はありますが、総合的な表現力はどうしても専用のピアノ音源には勝てません。
論より証拠。早速、聴いてみましょう。
以下、参考曲01:01~の01:19までの聴き比べです。この曲に使えそうなピアノの音色を選んでみました。
ゲインを揃える以外のプラグインは一切なしで、全く同じMIDIデータです。
最初のゆったりしたフレーズと16分の早いフレーズの違いに注目です。できればスピーカーで音量を大きくして聴いてみてください。
※この曲はルバート(テンポが伸縮する)で打ち込んだので実際には小節線を無視しています。
その1 Cubase付属「Bright Acoustic Piano」
その2 Cubase付属「Hard Grand Piano」
その3 Cubase付属「Compressed Rock Piano」
その4 Kontakt「Alicia’s Keys」……マルチ音源「Komplete」のピアノ音源
その5 Ivory II「Studio Grands」……ピアノ専用サンプリング音源
ね? 音の豊かさが全然違うでしょう? これがピアノ専用の音源を使うべき最大の理由です。
「Alicia’s Keys」はかなり頑張っていますね。実は少し前まで使っていました。
以前、僕も付属音源やマルチ音源のピアノの音色に対してイコライザーなどを駆使して音のチープさを解決しようとしていましたが、はっきり言って時間だけが過ぎ去っていきます。笑
Ivory IIを使い始めてからは付属音源やマルチ音源はほとんど使わなくなりました。聴いて分かるようになんと言っても表現力が格段に違います。適当に弾いてもそれっぽくなっちゃいます。

細かい調整なんてしなくてもリアルな演奏に!
Ivory IIの最新版「Studio Grands」については、以下の記事をどうぞ。複数のモデルからの選び方についても触れています。
人気記事ピアノ音源の最高峰!?「Ivory II Studio Grands」徹底レビュー
2. MIDIデータの調整が音に命を吹き込む
結論から言うと、「リアルタイムレコーディング」をしましょう(できれば)。
MIDI打ち込みの重要なポイントは主に3つです。
- タイミングとデュレーション
- サステインペダル
- ベロシティ
順番に解説します。
1.タイミングとデュレーションが最初の壁
まずはノートを打ち込むタイミングとデュレーション(長さ)についてです。
人がピアノを演奏する場合、すべてのノートオンとノートオフのタイミングが完全に一致することはまずあり得ません。
同時にコードを弾いたときに、実際にはどの指も微妙にずれて演奏しています。
以下、参考曲の一番最初の1小節です。
▼揃っている場合(良くない例)
すべてのノートオンとオフが一致しています。さすがにIvory IIでも違和感がある演奏です。
▼ずれている場合(良い例)
先程に比べ、より自然な演奏です。最初のコードは同時に弾いているつもりですが微妙にずれているのが聴こえますでしょうか? ちなみに2番目と3番目のコードはアルペジオです。意図してずらしています。
また、以下の図のように、次のノートと完全に連結することもほとんどありません。スラーなどで、メロディを滑らかに演奏する場合はノートが重なることもあります。
▼次のノートと完全に連結している(良くない例)
▼ずれている場合(良い例)
※この曲はルバート(テンポが伸縮する)で打ち込んだので実際には小節線を無視しています。
最低でもノートオンのタイミングは不自然にならない程度にずらして打ち込むと良いと思います。
ノートオフも大切なのですが、まずはノートオンから。その処理ができるようになったらノートオフを考えましょう。
打ち込みくさく聴こえる原因は(音源の質を覗いて)ほとんどがノートオンですから。
2. サステインペダルでピアノらしさアップ!
サステインペダルを踏みながら鍵盤を弾くと音が長く持続します。これもリアルなピアノ演奏では不可欠な要素です。
「その作品を活かすも殺すもペダル次第」といっても過言ではないくらい、実際のペダルテクニックはかなり奥深く、繊細です。

まともに習得しようと思ったら何年もかかっちゃいます。笑
とりあえず以下の2つ覚えてけば大抵の曲はそれっぽくなります。例外はいくらでもあるので悪しからず。
- ノートオンの後、ベース音のノートオフの前でサステインをオン。
- 次のコードのノートを弾いたらオフ
これの繰り返しです。ちなみに、今回のペダルはハーフペダル非対応です。オン・オンのみのペダルです。
下の図を見てください。縦の青い線がメロディ(トップノート)のノートオン。赤い線がベース音のノートオフです。
※弱起なので最初の2音(シ ド#)のメロディは無視しています。
▼サステインペダルの良い例
オレンジで書いた矢印。この間でサステイン(cc64)をオンにすると上手くいくことが多いです。次のコードが鳴り始めたらオフです。
▼サステインペダルの良くない例
はい、かなり大げさに失敗させました。とりわけ、サステインのオフが早いところ(ピンク)は音が切れるので分かりやすいですね。
サステインのオンが早いと弦の鳴りが響いてしまいます。オフほど目立ちませんが注意したいところです。
Goodマークのところは、メロディに辿り着く前のアルペジオの途中ですが、問題ありません。
赤いBadマークのところは、よくあるオンとオフが重なるミスです。「スナップオン(ショートカット:J)」しながらサステインを調整するとやらかすので注意しましょう。
ちなみに、電子ピアノのサステインペダルはYAMAHA「FC3A」が一番気に入っています。すごく使いやすいです。
人気記事【電子ピアノ】サスティンペダルはYAMAHA FC3A これ一択
ペダルに関しては色々なテクニックがあるので「これですべて解決!」というわけにはいきませんが、大抵は以上のやり方で上手くいくと思います。
3. ベロシティの調整が攻略の鍵
次はベロシティです。
ベロシティは「鍵盤を押す速さ」を表し、1~127の値で表されます(0だとベロシティオフ)。事実上「音の大きさ」を表しています。
正直、初心者にとってはベロシティの調整が一番難しいと思います。というのも感覚の部分が大きいからです。「この数字でなきゃダメ!」というのは一切ありません。
逆に、このベロシティの調整が上手くできれば、一気にリアルな演奏になります。僕もかなり気を使っています。
先ほどの「タイミングとデュレーション」は目で見て判断できるので比較的調整しやすいですが、ベロシティはなかなかそうもいきません。
例えば、できるだけ音量を揃えて同時に「ド・ミ・ソ」と弾いたときに、どの音が一番大きい音になる(ベロシティが最も大きくなる)と思いますか?
実はピアノ歴20年の僕にも分かりません。
運指や音域にもよりますが、リアルタイムレコーディングをした後の数値を見て始めて分かることです。

ベロシティを考えて弾いてるわけじゃないからね。
例えばデクレッシェンドの記号があったとき、後半のノートのベロシティが必ず小さいかと言われると、必ずしもそうではなかったりします。困ったものです。
打ち込みしたMIDIデータを聴きながら「このノートのベロシティが高すぎる、低すぎる」という判断はできるのですが、ゼロから一つひとつリアルな演奏になるようにベロシティを調整することはとても難しいです。できたとしても多分物凄く時間がかかります。それならもう一度リアルタイムレコーディングしたほうが早いです。
上手く打ち込めない場合は、ヒューマナイズ機能を使うのもありです。むしろ初心者の方はこちらのほうが上手くいくと思います。
Cubaseの場合は、上部メニューから「MIDI」→「ロジカルエディター」もしくは、トラック左側のインスペクタウィンドウ「MIDI モディファイアー」にベロシティをランダマイズさせる項目があります。
また、打ち込みに使うMIDIキーボードの鍵盤の作りによってはベロシティの幅に対応出来ない製品があります。特に小さい音(低いベロシティ)が出せない製品があるので。
それでも「リアルタイムレコーディングがしたい!」という方は、比較的安く、鍵盤の質もそこそこ良いYAMAHAのPシリーズがおすすめです。僕も使っています。
人気記事DTMにおけるMIDIキーボードとステージピアノを考える
3. リバーブとディレイの設定
さあ、リバーブとディレイです。これで曲が豹変します。
リバーブとディレイは、広がりや奥行きを表現するのに使います。ピアノの音を少しぼかしたり、遠くまたは近くで演奏させられます。これもベロシティ同様、かなり難しいです。なので細かい設定部分は割愛します。

正解のない、まさに底なし沼。笑
僕は、どちらもプリでセンドにして使っています。プリだとFXチャンネルのトラックをソロで聴けるので便利です。
こちらは各種FXを立ち上げただけのミキサー画面です。ここから調整していきます。普段はテンプレートがあるのでそれを使います。
リバーブはWavesのIR1やH-Reverb、Rverbなど、ディレイはH-delayやCubase付属のものを使うことが多いです。
僕は最初にコンボリューションリバーブのIR1でピアノの部屋の大きさを決めます。今回はプリセットの「Knight Halls」を選んでみました。
基本的にプリセットのままで問題ありませんが(下手にいじると悪くなるので)、Reverb TimeとEarly Reflectionだけを調整します。いつもは約1.0秒~2.0秒の間が多いです。今回は1.6s。
これだけでも印象が変わりますよ。ただし、やりすぎは注意です。
▼Ivory IIのみ(ゲイン以外のエフェクト一切なし)
▼Ivory II + IR1(ゲイン以外のエフェクト一切なし)
もう少し豊かな響きが欲しいときは、H-Reverbを足します。こちらもプリセットを元に作っていきます。ノイズの付加はオフにします。
▼Ivory II + IR1 + H-Reverb(ゲイン以外のエフェクト一切なし)
ディレイは、1/8音符や1/16音符の間隔もしくは時間を指定して設定しています。これもセンドでリバーブに送ります。送る量は適宜調整します。初めはディレイはなくてもいいと思います。
これで、原音とリバーブ、ディレイの3つ(もしくは4つ)のトラックができました。
最後に、大切なのはボリューム調整です。特にディレイは聴こえるか聴こえないか、というレベルで十分です。音量の小さいセクションではディレイは目立つので。
▼Ivory II + IR1 + H-Reverb + H-Delay(ゲイン以外のエフェクト一切なし)
普段はイコライザーで低音域(約200Hz以下)をカットするので、ここまでリーバブやディレイが強調しませんが、原音からの変化をわかりやすく紹介してみました。
あとは、コンプレッサーやイコライザーなどを使って微調整し、フェーダーで音量バランスを整えます。
YouTubeなどに投稿する場合は、動画編集をして完成です。
バンドやオーケストラにも応用可能
今回は、DTMでMIDIの打ち込みをリアルなピアノ演奏にする方法と具体的な手順を紹介しました。
基本が理解できれば、バンドサウンドやオーケストラにも応用できます。
初めのうちは細かい設定に気を使うよりも、一度ざっくり作ってから何が足りないのかを考えたほうが結果として次に良い作品が作れるようになると思います。
「チープな音源をイコライザでリッチにしよう」なんてことをやめましょう。笑
まずは一にも二にも、良いピアノ音源を揃えることを検討してみてください!
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