こんにちは、Keigo (@type00k) です。
前回の記事の続きで、定番ピアノ音源「Ivory II Studio Grands」の使い方を紹介しよう!




Studio Grandsはとても良い音源だけれど、やはり手動のチューニングはそれなりに必要になってくる。いかに自動車のエンジンが高性能でもチューニングをしなければただの鉄クズでしかない。実際に滑らかに車を走らせるには人間の手で調整する必要がある。
今回は僕自身の備忘録も兼ねて、具体的な使い方を僕の独断と偏見でまとめておきたい。異論は認める。
ピアノ音を読み込もう
これがIvory IIを立ち上げた最初の画面。




上部「Program」が選択されていることに注目してほしい。
これから戦闘機でも飛ばすのかというほどパラメータがある。まずこの画面からピアノのプリセットを選択することになる。
このままでは音は出ないので、右上の「Program Preset」からピアノのプリセットを選択する。




すると、ピアノのプリセットがずらっと出てくる。好きなプリセットを選んで右下の「OK」をクリック。ダブルクリックでも可。




各モデルの一番上が標準プリセット。基本的には標準プリセットを基準にして、その他好きなプリセットを選べば良い。が、僕は標準プリセットしか使っていない。
今回は標準プリセット「Model B Grand Piano」を読み込んでみる。
- Bösendorfer 225の標準プリセット
→ Bosendorfer 225 Grand Piano - Steinway Model Bの標準プリセット
→ Model B Grand Piano
ちなみに音源はSSDにインストールしているのでプリセットの読み込みは3~5秒程度だ。
なお、WesternDigital(SanDiskを買収)の定番SSDはコスパが良いのでオススメ。












パラメータの役割と使い方
以下、各種パラメータの役割と使い方を解説していく。
Programタブ
基本的な音質を決めるパラメータは以下の7つ。




左から順に説明する。
- Shimmer:揺らぎ。右に回すほど、音が揺らぐ
- Relese:減衰。右に回すほど、減衰時間が長くなる
- Key Noise:鍵盤ノイズ。右に回すほどノイズが増える
- Timbre:音色。音の質感が変わる
- Dynamic Range:音量幅。右に回すほど小さい音と大きい音の音量幅が狭くなる
- Trim:音量調整。SessionタブにもGainパラメータがある
- Stereo Width:ステレオ幅。左右への広がりを調整できる。左に振り切るとモノラル
先程のプリセット一覧は、Ivory IIの製作者がこのパラメータを調整してプリセットとして登録していたわけ。
パラメータは基本的にプリセットから選ぶと良い。僕もプリセットはあまり弄らない。下手に回すと不自然になる。
次に、アコースティックピアノ特有の弦の共鳴やペダルノイズなど設定する。




左上から番号順に説明したい。アコースティックピアノだと必ず鳴る音。
- Sustain Resonance:弦が共鳴した減衰音。右に回すと増える
- Sympathetic Resonance:弦同士の相互共鳴。右に回すと増える
- Pedal Noise:ペダルノイズ。右に回すと増える
- Release Samples:鍵盤を離した後の僅かな音。倍音
- Soft Pedal Samples:ソフトペダル
これもプリセットのままが良いと思う。
とりわけ音の変化が分かりやすいのは「① Sustain Resonance」と「② Pedal Noise」「④ Release Samples」。一気にリアルさが増す。音にもならないくらいの良い意味で微妙な音がリアルさを出してるんだと思う。
ただし、リアルタイム入力ですべてのパラメータをオンにするとレイテンシ(遅延)とプツプツ音が発生する。特に「④ Release Samples」が重い。
なので、リアルタイム入力するときはすべてのパラメータをオフにした方がいい。僕はMIDIを打ち込むときはすべてオフ、音作りの段階ですべてオンにしてる。
最終的な書き出しで必要なパラメータをオン、リアルタイム入力ではすべてオフにするのがオススメ。






僕のPC環境はRyzen 5の6コア、メモリ32GB、SSD2TB、MOTU M4
バッファの設定を変更しても変わらなかったから単純にIvory IIが重い




次に、「Stereo Perspective」は、ピアノの音が演奏者と客席のどちら側から聴こえるかを選択する。




弾くときは「Performer」、書き出すときは「Audience」など音が聴こえてくる方向を変えることができる。ピアノ演奏者とそれを聴いているお客さんは座っている場所が違うので当然音の聴こえ方も異なる、というわけ。
必ずそう合わせる必要はないけれど、変更すると音の印象がかなり変わるから覚えておくといい。
とはいえ、僕はいつも「Performer」にしている。「Audience」の位相、なんか変じゃない?
次に、「Synth Layer」はシンセパッドを付加できる。




パッドはメイン楽器の後ろ側で小さく鳴っている空気感のある音色。独特の世界観・雰囲気を作り出せる。適当に弾いてもなんか上手く聴こえる。
次に「Lid Position」は、グランドピアノの蓋のポジションを変えられる。




これは蓋の角度を変える項目でデフォルトでは「Full Stick」。グランドピアノの蓋が一番開いた状態。
基本的にデフォルトでOK。これイコライザーで処理しているだけじゃない?
補足:グランドピアノの蓋の役割
グランドピアノには突上棒(つきあげぼう)という蓋を支える棒がある。




短い突上棒が長いほうに格納できるギミックになってることが多い(箱型のアップライトピアノには突上棒はない)。
グランドピアノの蓋はその角度によって音質と音量が調整できる構造になっている。




蓋を開けるほど弦や響板の音が反射して客席の方へより大きく聴こえるため、コンサートホールなどでは基本的には長い突上棒を使う。長さは75cmくらい。
「短い突上棒」はピアノ伴奏で使われたりする。伴奏の場合は他にメインの楽器やボーカルがいるピアノは邪魔しないように音を少し小さく(柔らかく)する効果がある。
普段の練習では「長い突上棒」を使うことが多い(僕の経験上だけれど)。短い突上棒はギミックから取り出す必要があって、ひと手間かかってしまうからだ。
「蓋なし」は主にライブや撮影などで使われる。蓋があると後ろの人が見えないから。
あと、グランドピアノの蓋はけっこう重い。腰を入れないと上がらない。僕は筋トレをやっているので余裕。




補足終わり。
Effectsタブ
Effectsタブは、イコライザとコーラス、リバーブの3つを設定できる。




「イコライザ」は3バンド仕様で左側から「低音域」「中音域」「高音域」の周波数をブーストまたはカットができる。
「コーラス」は音に厚みを持たすことができ、「リバーブ」は部屋の残響を付加することができる。
どの項目も別のプラグインで再現できるけれど、イコライザとリバーブはけっこう使える印象。コーラスは特殊だから使ったことがない。これらの組み合わせも最初は難しいから一番上の「Effects Preset」から選ぶといいと思う。
Sessionタブ
Sessionタブは、Ivory IIの基本ステータスをカスタムチューニングしていく感じ。




「Memory Use」ではRAMメモリの使用量を決められる。「Small」「Midium」「Large」と3つあるが、RAMメモリに余裕があればLargeにしておきたい。僕はメモリ32GBなので「Large」。
個人的にオススメのメモリはこちら。2023年現在はメモリがメチャ安いから増設するには絶好のタイミングだと思う。








最後に「A4 Pitch」で楽器のピッチ(周波数)を決められる。デフォルトではA4=440Hz(ラの音)。基本的にはこのままでOK。
補足:国際標準ピッチについて
国際標準ピッチ(調律の基準となるラの音)は、A4=440Hz。
しかし最近のクラシック音楽やポップスだと441Hzや442~448Hzなど華やかさを求めてわりとインフレ傾向にある。442Hzが今のトレンドらしい。
最近聞いて驚いたのは、アニメ「ソードアート・オンラインII」のサントラ曲『A New World Of Fairies』。これのA4ピッチは448Hzあたりだと思う。この曲はF Majorキー「ファーソーラ~」で始まるがA4=440Hzだとすると「ファ#ーソ#ーラ#~」と判断するには音が低すぎる。
そんな感じでピッチを変えると独特な雰囲気になってエモい。僕もアップライトは長らくA4=442Hzに調律してる。
とはいえ、実際の楽器でピッチを高くしすぎると楽器に負荷が掛かるため、ほどほどに。
番外編:デモ音源を分析する
ここはちょっと個人的なメモ。
ところで、Synthogyのデモ音源が上手すぎる。
これは本当にIvory IIだけで作ったの?って思えるくらいプログラムが上手い。聴いた感じ、ベロシティとイコライザ、リバーブの使い方が重要そう。
ここではデモ音源4曲の波形とPeak、RMSやらLUFSを計測してみる。今の僕にできるのはそれくらい。
公式デモ音源①




Peakは-0.8。RMSは-35から-15、平均で-20前後。LUFS(どの値のLUFSか忘れた)は小さいところで-28前後、最大で-12。
公式デモ音源②




Peakは-0.7。RMSは-35から-15、平均で-17前後。LUFSは小さいところで-30前後、最大で-11。
公式デモ音源③




Peakは-0.6。RMSは-30から-16、平均で-20前後。LUFSは小さいところで-30前後、最大で-13。
公式デモ音源④




Peakは-1.0、RMSは-30から-16、平均で-20前後。LUFSは小さいところで-26前後、最大で-12。
公式デモ音源まとめ
デモ4曲の数値をまとめてみる。
デモ音源の使用ピアノ | Peak | RMS最小値 | RMS最大値 | RMS平均値 | LUFS最小値 | LUFS最大 |
---|---|---|---|---|---|---|
① Steinway Model B | -0.8 dB | -35 dB | -15 dB | -20 dB | -28 LUFS | -12 LUFS |
② Steinway Model B | -0.7 dB | -35 dB | -15 dB | -17 dB | -30 LUFS | -11 LUFS |
③ Boesendorfer 225 | -0.6 dB | -30 dB | -16 dB | -20 dB | -30 LUFS | -13 LUFS |
④ Boesendorfer 225 | -1.0 dB | -30 dB | -16 dB | -20 dB | -26 LUFS | -12 LUFS |
デモ4曲は全体的に音が小さめだ。
ピアノソロをYouTubeにアップロードするなら、最近のYouTubeのラウドネス事情も考えるとTrue Peakは-1.0dB、Short Termで-9.0 LUFSあたりの音圧で作ると良さそうだ。
YouTubeは動画ファイル全体の平均で-14.0 LUFS(仕様は順次変わる)だけれど、ピアノは音量のダイナミクスが激しいので平均ラウドネスは意味をなさない。そのため、Short TermやMomentaryのLUFSで判断すると良いと思った。
追記①:Ivory IIだけで高クオリティの音色にする方法
このブログやYouTubeでIvory IIを紹介して以来、「音作りが難しいのでIvory II Studio Grandsだけを使ってクオリティの高い音色にする画面設定を教えて欲しい」というメッセージを多数もらった。複数のプラグインを使った音作りに苦戦する人が多いらしい。
Ivory II Studio Grandsだけで音作りするとこんな感じ。曲はDebussy『Arabesque No.1』。使ったピアノはSteinway Model B。他のプラグインはゼロ。
上記で紹介したパラメータを上手く組み合わせると良い音になるが設定内容は有料になる。
ファイルの中身は上と同じwavファイルとそのMIDI、Ivory IIの設定画面の画像が入っている。説明どおりに設定すれば特に難しいこともなく3分で同じ音が作れる。
ファイル名 | Ivory II Studio Grandsだけで高クオリティの音色にするための設定方法 |
販売価格 | ¥980(税込) |
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形式 | rarファイル ※ ご購入直後にダウンロードできます。 |
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追記(2022年)②:Ivory IIは素晴らしい。が、本物には敵わない
ピアノを5歳から弾いているピアノオタクな僕の偏見を書いているので、ここは流し見でOK。
Ivory IIはピアノ音源としてとても素晴らしい。4年以上使用したけれど、サンプリング音源としては非常にバランスが良くほぼ完成されていることがよく分かった。困ったときはIvory IIでいい。
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