【ピアノ音源】Ivory II Studio Grandsの具体的な使い方 後編

どんなにエンジンが高性能でも適切にチューニングしなければその自動車はただの鉄クズでしかない。

ピアノ音源「Ivory II Studio Grands」も同じ。とても人気の音源だけれど、その良さを最大限発揮するにはそれなりにチューニングが必要になってくる。

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ということで前回の記事の続き。僕自身の備忘録も兼ねて具体的な使い方を僕の独断と偏見でまとめる。異論は認める。

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ピアノ音を読み込む

これがIvory IIを立ち上げた最初の画面。

戦闘機でも飛ばすのかというほどパラメータがある。

このままでは音は出ないので、右上の「Program Preset」からピアノのプリセットを選択する。

すると、ピアノのプリセットがずらっと出てくる。好きなプリセットを選んで右下の「OK」をクリック。ダブルクリックでも可。

各モデルの一番上が標準プリセット。基本的には標準プリセットを基準にして、その他好きなプリセットを選べば良い。

  1. Bösendorfer 225の標準プリセット
    → Bosendorfer 225 Grand Piano
  2. Steinway Model Bの標準プリセット
    → Model B Grand Piano

全部聞いたけど僕は標準プリセットしか使っていない。だから今回も標準プリセット「Model B Grand Piano」を読み込んでみる。ちなみに音源はSSDにインストールしているのでプリセットの読み込みは3~5秒程度。

なお僕はWesternDigitalの定番SSDを使っている。コスパが良い。

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パラメータの役割と使い方

順番に解説する。

Programタブ

基本的な音質を決めるパラメータは以下の7つ。

左から順に解説すると下記。

  1. Shimmer:揺らぎ。右に回すほど、音が揺らぐ
  2. Relese:減衰。右に回すほど、減衰時間が長くなる
  3. Key Noise:鍵盤ノイズ。右に回すほどノイズが増える
  4. Timbre:音色。音の質感が変わる
  5. Dynamic Range:音量幅。右に回すほど小さい音と大きい音の音量幅が狭くなる
  6. Trim:音量調整。SessionタブにもGainパラメータがある
  7. Stereo Width:ステレオ幅。左右への広がりを調整できる。左に振り切るとモノラル

先程のプリセット一覧はIvory IIの製作者がこのパラメータを調整してプリセットとして登録していたわけ。

パラメータは基本的にプリセットから選ぶといいと思う。僕もプリセットはあまり弄らない。下手に回すと不自然になりがちだったから。

弦の共鳴とペダルノイズ

次に、アコースティックピアノ特有の弦の共鳴やペダルノイズなど設定する。

左上から番号順に説明するとか下記。

  1. Sustain Resonance:弦が共鳴した減衰音。右に回すと増える
  2. Sympathetic Resonance:弦同士の相互共鳴。右に回すと増える
  3. Pedal Noise:ペダルノイズ。右に回すと増える
  4. Release Samples:鍵盤を離した後の僅かな音。倍音
  5. Soft Pedal Samples:ソフトペダル

とりわけ音の変化が分かりやすいのは「① Sustain Resonance」と「② Pedal Noise」「④ Release Samples」。一気にリアルさが増す。音にもならないくらいの良い意味で微妙な音がリアルさを出してるんだと思う。

ただし、リアルタイム入力ですべてのパラメータをオンにするとレイテンシ(遅延)とプツプツ音が発生する。特に「④ Release Samples」が重い。

なのでリアルタイム入力するときはすべてのパラメータをオフ推奨。僕はMIDIを打ち込むときはすべてオフ、音作りの段階ですべてオンにしてる。

最終的な書き出しで必要なパラメータをオン、リアルタイム入力ではすべてオフにするのがオススメ。

ちなみに僕のPC環境はRyzen 5の6コア、メモリ32GB、SSD2TB、MOTU M4。バッファの設定を変更しても変わらなかったから単純にIvory IIが重い。詳細は以下の記事。

プレイヤー vs. 観客

次に、「Stereo Perspective」。ピアノの音が演奏者と客席のどちら側から聴こえるかを選択する。

弾くときは「Performer」、書き出すときは「Audience」など音が聴こえてくる方向を変えることができる。ピアノ演奏者とそれを聴いているお客さんは座っている場所が違うので当然音の聴こえ方も異なる、というわけ。

必ずそう合わせる必要はないけれど、変更すると音の印象がかなり変わるから覚えておくといい。

とはいえ僕はいつも「Performer」にしている。「Audience」の位相、なんか変じゃない?

シンセはお好みで

次に、「Synth Layer」はシンセパッドを付加できる。

パッドはメイン楽器の後ろ側で小さく鳴っている空気感のある音色。独特の世界観・雰囲気を作り出せる。適当に弾いてもなんか上手く聴こえる。不思議。

ピアノの蓋の開き具合まで

次に「Lid Position」は、グランドピアノの蓋のポジションを変えられる。

これは蓋の角度を変える項目でデフォルトでは「Full Stick」。グランドピアノの蓋が一番開いた状態。

基本的にデフォルト「Full Stick」でOK。これってイコライザーで処理しているだけじゃない?

補足:グランドピアノの蓋の役割

グランドピアノには突上棒(つきあげぼう)という蓋を支える棒がある。

短い突上棒が長いほうに格納できるギミックになってることが多い(箱型のアップライトピアノには突上棒はない)。

グランドピアノの蓋はその角度によって音質と音量が調整できる構造になっている。

蓋を開けるほど弦や響板の音が反射して客席の方へより大きく聴こえるため、コンサートホールなどでは基本的には長い突上棒を使う。長さは75cmくらい。

「短い突上棒」はピアノ伴奏で使われたりする。伴奏の場合は他にメインの楽器やボーカルがいるピアノは邪魔しないように音を少し小さく(柔らかく)する効果がある。

普段の練習では「長い突上棒」を使うことが多い(僕の経験上だけれど)。短い突上棒はギミックから取り出す必要があって、ひと手間かかってしまうからだ。でも人による。

「蓋なし」は主にライブや撮影などで使われる。蓋があると後ろの人が見えないから。

あと、グランドピアノの蓋はけっこう重い。腰を入れないと上がらない。僕は筋トレをやっているので余裕。

補足終わり。

Effectsタブ

Effectsタブは、イコライザとコーラス、リバーブの3つを設定できる。

「イコライザ」は3バンド仕様で左側から「低音域」「中音域」「高音域」の周波数をブーストまたはカットができる。

「コーラス」は音に厚みを持たすことができ、「リバーブ」は部屋の残響を付加することができる。

どの項目も別のプラグインで再現できるけれど、イコライザとリバーブはけっこう使える印象。コーラスは特殊だから使ったことがない。これらの組み合わせも最初は難しいから一番上の「Effects Preset」から選ぶといいと思う。

補足

今現在(2024年)の僕は、リバーブは「Cinematic Rooms」を使っている。空間の表現力が他のリバーブの追随を許さないほど段違いで、アコースティック楽器に向いている。

リアルな音色を作り出す秘訣は、質の高いピアノ音源とリバーブの掛け算がだと思う。どちらかが欠けてもダメ。

Sessionタブ

Sessionタブは、Ivory IIの基本ステータスをカスタムチューニングしていく感じ。

「Memory Use」ではRAMメモリの使用量を決められる。「Small」「Midium」「Large」と3つあるが、RAMメモリに余裕があればLargeにしておきたい。僕はメモリ32GBなので「Large」。

僕が使っているメモリはこれ。コスパ良すぎ。

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最後に「A4 Pitch」で楽器のピッチ(周波数)を決められる。デフォルトではA4=440Hz(ラの音)。基本的にはこのままでOK。僕は最近は442Hzが多い。

補足:国際標準ピッチについて

国際標準ピッチ(調律の基準となるラの音)は、A4=440Hz。

最近のクラシック音楽やポップスだと441Hzや442~448Hzなど華やかさを求めてわりとインフレ傾向にある。442Hzが今のトレンドらしい。

最近聞いて驚いたのは、アニメ「ソードアート・オンラインII」のサントラ曲『A New World Of Fairies』。

この曲のA4ピッチは448Hzあたりな気がしている。この曲はF Majorキー「ファーソーラ~」で始まるがA4=440Hzだとすると「ファ#ーソ#ーラ#~」と判断するには音が低すぎる。

そんな感じでピッチを変えると独特な雰囲気になってエモい。そんなノリで僕は長らくA4=442Hzを採用。

とはいえ実際の楽器でピッチを高くしすぎると楽器に負荷が掛かるためほどほどに。

番外編:デモ音源を分析する

ここはちょっと個人的なメモ。Synthogyのデモ音源が上手すぎる。

これは本当にIvory IIだけで作ったの?って思えるくらいプログラムが上手い。聴いた感じ、ベロシティとイコライザ、リバーブの使い方がミソ。

ここではデモ音源4曲の波形とPeak、RMSやらLUFSを計測してみる。今の僕にできるのはそれくらい。

公式デモ音源①

ピアノはSteinway Model B

Peakは-0.8。RMSは-35から-15、平均で-20前後。LUFS(どの値のLUFSか忘れた)は小さいところで-28前後、最大で-12。

Cubaseの場合、左上のオーディオ(Audio) → 統計(Statistics)でオーディオファイルの各種数値が出せる。

公式デモ音源②

ピアノはSteinway Model B

Peakは-0.7。RMSは-35から-15、平均で-17前後。LUFSは小さいところで-30前後、最大で-11。

公式デモ音源③

ピアノはBoesendorfer 225

Peakは-0.6。RMSは-30から-16、平均で-20前後。LUFSは小さいところで-30前後、最大で-13。

公式デモ音源④

ピアノはBoesendorfer 225

Peakは-1.0、RMSは-30から-16、平均で-20前後。LUFSは小さいところで-26前後、最大で-12。

公式デモ音源まとめ

デモ4曲の数値をまとめてみる。

スクロールできます
デモ音源の使用ピアノPeakRMS最小値RMS最大値RMS平均値LUFS最小値LUFS最大
① Steinway Model B-0.8 dB-35 dB-15 dB-20 dB-28 LUFS-12 LUFS
② Steinway Model B-0.7 dB-35 dB-15 dB-17 dB-30 LUFS-11 LUFS
③ Boesendorfer 225-0.6 dB-30 dB-16 dB-20 dB-30 LUFS-13 LUFS
④ Boesendorfer 225-1.0 dB-30 dB-16 dB-20 dB-26 LUFS-12 LUFS

デモ4曲は全体的に音が小さめだ。

もしピアノソロでYouTubeにアップロードするなら、True Peakは-1.0dB、Short Termで-9.0 LUFSあたりの音圧で作ると良さそう。

YouTubeは動画ファイル全体の平均で-14.0 LUFS(仕様は順次変わる)だけれど、ピアノは音量のダイナミクスが激しいので平均ラウドネスは意味をなさない。Short TermやMomentaryのLUFSで判断すると良いと思った。

良い感じの音色にしてみる

上記で紹介したパラメータを弄って音作りしてみた。

使ったプリセットはSteinway Model B。他のプラグインはなし。曲はDebussy『Arabesque No.1』。

下記の設定画面と同じように設定するとできる。

追記:Stereo Widthは100%固定必須(パンを狭くするとなぜか位相が悪くなるから)

あくまで一つのサンプルなので好みで調整してほしい。

追加:Ivory 3 German Dが新発売

2023年3月にIvory 3 German Dが発売された。

エンジンが刷新されて音がさらに良くなった。やっぱりどんなジャンルにも対応できる万能ピアノ音源だなあという印象。今から買うならIvory 3一択。

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でも4万円。高くなったよね。インフレと円安の弊害。しゃーなし。

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