最も良いMIDIキーボードは何か?
そんなのは人によるとしか言いようがないんだけど先日ふらっと寄った新宿の楽器屋で最新のMIDIキーボードを試奏してきたこともあってこの記事を書いている。
ということで今回はDTMで使うピアノソロ向けのMIDIキーボードについて5歳からピアノを弾いている僕の独断と偏見を紹介する。
DTMにMIDIキーボードは必須
そもそもなんだけどDAWにMIDIを打ち込むツールの一つがMIDIキーボード。演奏した音符・音の強弱・ペダル情報をDAWにまとめて送信することができる。
MIDIはマウスでぽちぽち打ち込むこともできる。けれどピアノソロのようにコードやメロディーを滑らかな演奏情報として打ち込むにはリアルタイム入力が必要だ。だからMIDIキーボードは必須と言っても過言ではない。
一般的にMIDIキーボードを選ぶ時のポイントはざっくりこんな感じだと思う。
- 鍵盤数
- フルサイズキー or ミニキー
- 鍵盤の作り
- ペダル端子の有無
- コントローラ機能
- 付属ソフト
- メーカー(ブランド)
今現在YAMAHAやKORG、Roland、CASIO、KAWAIなどからたくさんの種類のMIDIキーボードが発売されていて値段も3,000円~とピンキリだ。
正直選ぶポイントが多すぎてどれが最も自分に合ってるMIDIキーボードなのかの判断が素人には難しいところ。
ピアノソロなら88鍵一択
MIDIキーボードは、鍵盤数が異なる商品がたくさんある。
- 25鍵
- 32鍵
- 49鍵
- 61鍵
- 76鍵
- 88鍵
売られてるのはざっくりこんな感じだ。鍵盤数は自分の好みや作業環境によって変わるため一概にどれが良いとも言えない。
一つ言えるのは鍵盤の数が多くなるほど横幅が広くなることだ。デスクに置くなら物理的な問題が出てくる。本物のグランドピアノは88鍵盤が標準で横幅は約123cm。だからかなり場所を取る。
右手で短いフレーズをさらっと打ち込むなら25鍵で問題ないけれど両手でピアノソロを弾くには61鍵だと足りないといった感じで実際にそのMIDIキーボードを使ってみないと本当に自分に合うかどうか分からないので迷いもする。
Keystation 61は3日で手放した
以前、僕はコスパ最強と名高いM-AUDIO Keystation 61を15,000円くらいで買った。61鍵盤の中ではコスパがえぐい。
Keystationシリーズの良いところはとにかくシンプルなデザイン。これに尽きる。
当時は横幅の長さを考慮して61鍵を購入した。しかし実際に使ってみると音域の広いピアノソロを打ち込むにはどうしても88鍵が必要だとすぐに実感した。曲によっては61鍵に収まることもあるが僕のプレイスタイル的に61鍵盤では数が足りない。
一応、61鍵盤でもスイッチで音域の移動はできるけれど演奏中にそんな急に操作できないし今どの音域を弾いてるのか分からなくなる。
ということで横幅の問題だけを考慮して初めて買ったM-AUDIO Keystation 61は3日で手放した。
もちろんKeystation自体は評判がとても良いし値段を考えたら全然悪くない。悪いのは僕の浅慮だ。
Keystation 88は7日で手放した
そんなこんなで次に買ったのがKeystation 88。61鍵がダメなら88鍵作戦だ。
88鍵盤、ペダル端子有り、重量7.7kg、そして安い。これもコスパは最強。
ただ問題が発生した。ベロシティが上手く打ち込めない。「鍵盤の作り」の問題がある。ざっくり言うと、鍵盤がおもちゃのようなカチャカチャする作りか、本物のアコースティックピアノに近い鍵盤のかどうか。
Keystationは鍵盤がプラスチックで、バネを使った簡単な作りになってる。その分コストが抑えられる利点もある。
購入初期は鍵盤が88あることで満足していたがリアルタイム入力をしたMIDIのベロシティ(鍵盤を押し込む速さ)が上手く入力できないことにすぐ気がついた。これだと音量のダイナミクスが全然出ないのでピアノソロらしさがない。
61鍵盤を使ったときに気づくべきだった。鍵盤が足りないことのほうに気を取られていた。
この世に無情を感じながら人生で2台目のMIDIキーボードは7日で手放した。浅慮の極みだ。
ステージピアノという選択肢
次に探したのがライブ演奏で使われるような電子ピアノ、ステージピアノだ。
ステージピアノは木製の鍵盤を搭載してたりシンセ機能が盛り込まれてたりするため、一般的なMIDIキーボードよりも何倍も高い。
値段は高いけれど鍵盤が本格的な作りをしているならMIDIも問題なく打ち込めるはずだしもはやピアノソロのためにはそれくらい投資しないと満足できないんじゃないかと考え始めた。
ただそれも微妙に的を射ていないことに後から気がつくことになる。
ステージピアノは一番良いのはどれだ?
ではどのステージピアノが一番良いのだろう。調べてみると安いものでも5万円台、高いものは40万円を超える。
以下メーカー別のざっくりとしたステージピアノの価格帯だ。
メーカー | ステージピアノの価格帯 |
---|---|
CASIO | 5万~8万円 |
Studiologic | 6万~18万円 |
Roland | 6万~24万円 |
KORG | 4万~24万円 |
KAWAI | 13万~28万円 |
YAMAHA | 13万~45万円 |
Nord | 25万~48万円 |
MIDIキーボードとは明らかに価格帯が違う。サンタに頼む額ではない。
鍵盤性能は価格に比例するのだろうか?(結論:いや、別に比例しない)
少し余談:鍵盤は日本メーカーのほうがいい気がしてきた
今まで僕は楽器屋に置いてあるありとあらゆる電子ピアノを試奏してきた。僕の半径5km以内の人類のうち電子ピアノ試奏回数は確実に誰よりも多いはずという謎の自信すらある。
しかしその日まで唯一イタリアメーカーの電子ピアノStudiologicの電子ピアノを弾いたことがなかった。が、たまたま行った楽器屋に置いてあったNuma CompactとNuma Concertを試奏する機会があった。
結論を言うと鍵盤が微妙だった。こういうのは弾いた瞬間に分かってしまう。「あっ、これじゃない」と。ただデザインはイタリアらしい国産にはあまりない良さがあった。電子ピアノを選ぶ基準は鍵盤だけがすべてではないから。
その後高級ステージピアノと名高いNord Pianoも弾き比べたが(Nordは以前から何度も試奏している)、これも値段のわりに驚くほどタッチが良いわけでもなかった。Nordはどちらかというとシンセに力を入れている気がする。
つまり鍵盤性能は必ずしも値段に比例するわけではないということ。
以前海外の記事で読んだけれど電子ピアノの鍵盤を作る技術は世界的に見ても日本のメーカーが一番優れているらしい。製造法は専門外だけれど小型化・効率化は日本の十八番なので一理あるとは思った。素直に国産の電子ピアノを選ぶのが無難な気がしている。
そんなわけで鍵盤の性能に力を入れてる電子ピアノを中心に絞ることにした。
結論:YAMAHA P-525が個人的ベスト
面倒なので要約すると個人的にはピアノソロ向けのMIDIキーボードならYAMAHA P-525が今現在ベスト機種だ。
P-515はPシリーズの最上位モデルで定価は約15万円だけれど、2022年現在は某ウイルスの影響で価格変動が激しい。
P-515はステージピアノではなく通常の電子ピアノだ。しかし、YAMAHAのステージピアノの最上位モデルCP88よりも鍵盤の作りが良いのだ。CP88はNW-GH3鍵盤、P-515はNWX鍵盤。弾き心地も確かにP-515のほうが良い。
鍵盤性能以外にも総合的に評価は高い。
- 木製鍵盤
- 最高級音源のYAMAHA CFXサンプリングを搭載
- スピーカー付き
- 余計なツマミ類がない(故障率が下がる)
- 15万円と比較的安価な部類
- シンプルなデザイン(サイズが小さい)
- 操作ボタン部分にPCのキーボードが置ける
一言で表すなら、致命的な弱点がない優秀な電子ピアノだ。完成度が異常に高いので数年後には名機と言われることになるのは確実だと思う。
鍵盤の弾き心地も良い。もちろんグランドピアノには敵わないが、P-515は弾いていて違和感が少ない。このサイズでこの性能ならかなり満足できる。
また、操作ボタン部分がフラットなのでPCのキーボードが置けるのが個人的に良い。僕はディスプレイ、PCのキーボード、電子ピアノの順に置きたいタイプだ。電子ピアノに回すタイプのつまみが付いてると、それだけでPCのキーボードが置けなくなってしまう。P-515はPCとの相性が抜群だ。
P-515の音色は公式のYouTubeで聴ける。
音源YAHAMA CFX(実機は2,000万円以上)のクオリティもかなり良いので練習も捗りそう。やはりスピーカーがあったほうが普段使いは楽だ。ほとんどのステージピアノだとスピーカーがないのがキツイ。
実はこの結論に到るまでに鍵盤の性能以外にもスピーカーの有無や内蔵音源の性能・搭載端子・デザイン上の物理的な制約などありとあらゆる懸念事項が出てきてベスト機種を探すのに苦戦した。VPC-1やN1Xも良かったけれど物理的サイズが大きすぎる。
おわりに
ピアノソロ向けならクオリティが高い88鍵盤を搭載した電子ピアノが必須なのは共感してもらえそうだけれど本体のサイズ感や使い勝手、細かい仕様の部分でそれぞれ意見の違いは出てくると思う。
だからMIDIキーボードや電子ピアノを買う時は絶対に試奏したほうがいい。店舗だと実機を見比べたりすることもできるから事前に目星を付けてたものよりもっと良いものが見つかるかもしれない。
僕個人としては今使っている電子ピアノ(YAMAHA P-105)が壊れたらP-525を買おうと思っている。
コメント
コメント一覧 (7件)
通りすがりの者です。
もしこの記事以降にP-515を触った時には、感想をぜひアップしていただきたいです。
加えてCP4と比較したものもあれば嬉しいです。
私は電子ピアノを買い換えようと思っていて、P-515で検索したらこちらのサイトにたどり着きました。第一用途は子供のレッスン用で、第二は自分も少しだけ弾けるのでたまに弾きたい感じです。
鍵盤のタッチを重視してて、木製鍵盤であるクラビノーバのCLP645を調べたらP-515と比較することに(金額もそれくらいを考えています)。しかし、メーカーに尋ねたら私のいる地域は実機が置いていないと言われた為、タッチ等が全くわかりません。
そうこうしている内に、CP4が古い機種ながらも音とタッチが良い(CP4は木製鍵盤)とあり、CP4は楽器店で探ってみようと思います。
自宅ではクラビノーバの実機で大きなサウンドを必要ではありません。ヘッドホンは子供には使用せず小さめの音で練習しています。
CP4は古い機種ですがまだまだ利用できる感じか、P515も含めて2機種に求めるのは、最終的には生ピアノに近い弾き心地が大切で、多機能を使いません。CPに気がかりな点はフッドペダルですね。
現在昔のヤマハ Pシリーズを使っていて、スピーカーがなくてタッチのみピアノに迫った時代のもの。モニタースピーカーを使ってますのでそのスピーカーを再利用可能です。
もしかしたら、少し時間が取れるようになったら、昔挫折したDTMに私が手を出すかもしれないという下心もあるので(今のピアノはその残骸です)、クラビノーバに食指が動かなかったのもあります。
子供には受験などがあっても細々とでもピアノは続けさせたいですし、自分も再び触って行きたいですが、住宅事情と経済的に今の時点ではこの金額かと思っています。
お時間があるときで構いませんので、使い心地のレビューやプロとしてのアドバイスをよろしくお願いします。
通りすがりママ さん
コメントありがとうございます、Keigoです。
リアルな鍵盤へのこだわり、とても理解できます。笑
たまたま近所の楽器店に行く機会があったので、備忘録も兼ねて個人的な意見を述べておきます。
お調べになってご存知かもしれませんが、P-515とCLP645はの鍵盤グレードは同じ「NWX鍵盤」です。
これはCP4 STAGEの「NW鍵盤」に新たに「エスケープメント機構」が搭載されたものです。
公式HPで「エスケープメント機構」について以下のように記載されています。
「グランドピアノでは、ごく弱い力で鍵盤を押しこんだ時に、鍵盤が下がる途中でわずかな手ごたえを感じます。
これは、打鍵後にハンマーが弦の振動を止めずに速やかに離れる仕組み(エスケープメント機構)が搭載されているためです。よりリアルなグランドピアノのタッチ感を再現するために、エスケープメントのわずかな手ごたえを、鍵盤機構に搭載しております。」
残念ながら楽器店にP-515がなかったため、CP4 STAGEとCLP645、ついでにCLP685試奏してきました。
P-515とCLP645は同じ鍵盤グレードのため、タッチは変わらないと思います(念の為、今度試しに行きます)。
CLP645を弾いた感じでは、確かに「エスケープメント機構」は良かったです。
やはり少々機械的な感覚はあるものの、「アコースティックピアノ特有の『手ごたえ』を」、というヤマハがやりたいことは理解できます。正直、「こんな細かいことまでやる?」と思いました。笑
ママさんのようにピアノ経験者であれば「ああ、確かにこの感覚は生ピアノにもあるよね」となると思います。とりわけ、ごく弱いタッチでこの機構の恩恵を受けます。その点では「NW鍵盤」から20%ほど(体感で)鍵盤性能が上がった感覚です。
しかし逆に、クラシック曲のような繊細さを必要としなければ(たまに弾くくらいであれば)「NW鍵盤」でも十分な気もします。「エスケープメント機構が”絶対に”必要か?」と言われると、個人的には「んーまあ、なくても困らないかなあ」というのが正直なところです。と言っても、これからは「NWX鍵盤」が標準装備になりそうなので、あったほうが良いですかね(どっちだい)。笑
ですので、よりリアルな鍵盤を求めるのであれば「P-515」もしくは「CLP645」が良いと思います。
個人的には、ママさんの用途ですと、デザイン等にこだわりがなければ、あえて「CP4 STAGE」を選ぶ必要はないと思います。
CP4 STAGEの良さは、(そこそこ)優れた木製鍵盤でありながら、アンプとスピーカーがないことによる「省スペース設計」かつ「軽量(17.5kg)」、という点です。あとデザインもシンプルで良いです(重要)。笑
ただしデメリットとしては、譜面立てがないので別途用意する必要があることと、さらにおっしゃる通り「フットペダル」ですね。お子さんのレッスン用に、とのことですので今後ソフトやソステヌートが必要な楽曲を弾くのであれば、この点でCPは向かないです。
また、「P-515」と「CLP645」の鍵盤のタッチ以外の違いですが、気になるのは以下4点でしょうか。
1.本体の大きさ(CLP-645はP-515より幅が12.5mm長く、奥行きは8.3cm長い)
2.重さ(CLP-645は60kg、P-515は22kg + 専用スタンド「L-515」9kg)
3.アンプ&スピーカーの性能差
4.内蔵MIDI収録曲の差
部屋に置ける広さがあり、置きっぱなしにするのであれば「CLP-645」で、スタジオに持って行ったり、部屋の行き来で持ち運びたい、将来的にDTMなどで移動を伴うのであれば「P-515」といった感じでしょうか?
「P-515」のデザインもスタイリッシュで良いです(重要)。笑
余談ですが、今回ついでに試奏したCLP685は「グランドタッチ鍵盤」という新開発の鍵盤を搭載しています。
公式では「鍵盤先端から支点までの距離が、他社製品も含めた現行の電子ピアノの中で最も長く、弱音のニュアンスをより細かく再現できるようになっています。」とあります。確かに、CLP645の「NWX鍵盤」との違いはあります。が、わりと繊細な違いです。個人的には「エスケープメント機構」の恩恵のほうが大きく感じられました。
タッチの感覚を語弊なく伝えるのは難しいですが、素直に思ったことを書いてみました。
P-515を試奏する機会があれば、もう一度書こうと思います。
繰り返しになりますが、あくまで個人の意見ですのでご参考までにしてください!
詳しい解説をありがとうございます。私自身は大人になって数年やっただけの初級者なので、そうピアノに造詣が深くないのと、やはりP-515実機がこちらには(近隣県すら)ないし、そのほかのことも大変参考になります。
ぜひP-515の感想をお知らせ下さい。楽しみにしてます。
書き方が悪くてすみません。
自宅ではクラビノーバのように本体から、大きめのサウンドを出すのは求めていないと書くつもりでした。
もっているのはPシリーズです。
DTMに関心あるけど、腰が引けている親父バンドキーボードです。88鍵のステージピアノを買おうか迷っていることろです。CP-4とCP88の違いを3点あげていらっしゃいました。その後さらに比較等されましたなら、参考までにお聞かせください。よろしくお願いします。
ROY さん
コメントありがとうございます。Keigoです。
結論から申し上げますと、予算が許すのであれば「CP88」が良いと思います。
CP88はシンセ周りが強化されていて、音はもちろん、操作性がかなり向上しています。つまみやスイッチ類も洗練されていて、どこに何があるのか一目で分かります。バンドなどで積極的に音作りをするなら直感的に操作可能なCP88のほうが有利かと思います。
また、CP4よりは1kgほど重いですが、素材がアルミボディになったので高級感があります。
参考になりそうなYouTubeのURLを貼っておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=b12KAntrir0
もし、単にMIDIキーボードとして使うのであればCP4でも十分だと思います。ソフトシンセを使う頻度が高ければ、ですが……。
以上、参考になれば幸いです。
Keigoさん。You Tube 拝見しました。おっしゃる通り大変参考になりました。特にスプリットした後で、簡単に音域を変えられるのは実践向きだと思います。あとは店頭で引いてみたいと思います。どうもありがとうございました。 Roy