ハイブリッドピアノ YAMAHA AvantGrand N1Xというヤバイ商品が発売されてしまう件
2019年3月。YAMAHAから「N1X」というハイブリッドピアノが発売されます。
ハイブリッドピアノとは「アコースティック(生)ピアノと同じ鍵盤構造で音はデジタル」という超ハイテクなピアノです。一応、電子ピアノなので「アコースティックピアノが弾きたいけど音が大きすぎて近所迷惑になるから弾けない!」という、まさに全世界のピアニストの悩みを解決してしまうピアノでもあります。笑
電子ピアノは鍵盤の構造上どうしたってタッチに限界があるけれど、このハイブリッドピアノの鍵盤はアコースティックピアノと同じ「ハンマーアクション」なので弾き心地は最高です(のはず)。
ちなみに商品名の「Avant」はフランス語で「~より先に」という意味です。
今回は、2019年3月に発表されるYAMAHA「AvantGrand N1X」について書いていきます。
ヤマハの最先端ピアノ技術の結晶「AvantGrand」
ヤマハではこのハイブリッドピアノ「AvantGrand(アバングランド)」シリーズが2009年から発売されていて「N3X」「N2」「NU1X」の3種類が販売されています(2019年5月現在)。
AvantGrand N3X
機種:AvantGrand N3X
価格:160万円
発売:2016年11月
重量:199kg
スピーカー:12個
グランドピアノに限りなく近づけた鍵盤のタッチ。ピアニストの想像力に応えるペダルフィーリング。立体的で奥行きのある音を再現するスピーカーシステム。これからのピアノはこうありたいという思いを、先進のテクノロジーと美しく昇華されたデザインに込めました。グランドピアノがもつ音の奥行き、響きを余すことなく再現します。
AvantGrand N2
機種:AvantGrand N2
価格:105万円
発売:2009年7月
重量:142kg
スピーカー:9個
グランドピアノらしい曲線を意識してデザインされたN2。鍵盤にグランドピアノのアクション機構を搭載しながらも、スリムな奥行きを極めたモデル。
AvantGrand NU1X
機種:AvantGrand NU1X
価格:40万円
発売:2017年10月
重量:111kg
スピーカー:6個
アコースティックのアップライトピアノと同様のアクション機構と木製鍵盤を、最新の音源や精巧なセンサー、音響技術と組み合わせることで、グランドピアノさながらの演奏感と、豊かな表現力を実現したモデルです。
主な違いは「ピアノ本体の外観」と「アンプ、スピーカー数」と「スピーカーの配置」です。音源はすべて同じです。
ヤマハ「Clavinova(クラビノーバ)」の最上位モデルでもスピーカー数は4個なので、AvantGrandはかなり音響に力を注いでいます。ちなみに、設計と製造はClavinovaチームとは別のようです。
また、「N3X」と「N2」はグランドピアノの鍵盤ですが「NU1X」はアップライトピアノの鍵盤です。カツ丼と親子丼くらい違います(?)。
余談:日本の住宅事情とピアノの相性問題
突然ですが「ピアノ x 日本の木造住宅」の相性はとんでもなく悪いです。笑
その1:ピアノ重すぎ問題
アコースティック(生の)ピアノの重量は軽くても200kgを超えます。僕が所有しているYU5は260kg、一般的なグランドピアノに至っては300kgを超えます。
アップライトピアノで194kg(b113)~278kg(YUS5DKV)。体重80kgの成人男子約3人ぶんの重さです。
グランドピアノは261kg(GB1K)~415kg(C7X)と大きさによって幅があり、320kgのC3Xで成人男子約4人ぶんの重さです。
建築基準法では、住宅の床の積載荷重量は1,800N/㎡(約180kg)と定められているので、たいていのグランドピアノでもそのまま設置することはできます。
ただ木造の場合、床下を補強せずに置くとかなり確率でたわみます。
▼ 「大改造!!劇的ビフォーアフター」の床下補強工事。木造2階の6畳間に300kgのグランドピアノを導入後、床下がたわんでいます(7:43~)。
※リンク切れです。スミマセン……。
その2:ピアノの音デカすぎ問題
ピアノの音量は最大で100dB(デシベル)を超えます。これは電車が通るガード下や車のクラクションとと同レベルの音量です。
人は40dB程度の音量であればあまり気にならないとされていますが、一般的な木造住宅の壁や扉、サッシの性能では10~20dB程度しか軽減できません。
さらに、日本の国土面積38万平方キロメートルは、アメリカの国土面積の25分の1、その割に人口は3分の1。人が多い割にやたら狭い国、それが日本。
アメリカは本当に広いです。以前、僕がアメリカを車で横断(往復)したときは14日間で1万3000km以上走りました(白目)。
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日本は土地が狭いうえに人が多いので、当然隣家との距離も物理的に近くなります。70%が山岳地帯、67%が森林地帯という島国なので仕方ないですが。
その3:防音最強の地下室がない問題
ところで、防音において最強とされる「地下室」の普及率はどうだろう。
どうやら「核シェルター」の普及率で調べればよさそう(ガバガバ基準)。
日本の地下室の普及率は驚きの0.02%! 確かに、地下付きの戸建てなんぞ滅多に見ません。え? 地下室持ってるって? ぜひ譲ってください(白目)。
戦後、都市では焼け野原の復旧が求められました。世界唯一の原爆投下を経験したからこそ核シェルターが普及していても良さそうですが、お金と資源がなかったのでしょうかね……。
ちなみに、僕の地元の名古屋(というか濃尾平野)は水位が高くて、一般住宅で地下室の建造は厳しいようです。埋め立ても多いので大きな地震が来たら津波と液状化で大打撃です。南無三。
左側の赤い場所が濃尾平野です。
その4:鉄筋コンクリートの戸建てが普及していない問題
2014年時点の日本の新築住宅の約55%は木造です。集合住宅の多くが鉄骨や鉄筋コンクリートで建てられているので、戸建て住宅に絞ると木造率はもっと高くなります。
引用:新築住宅の木造率は?
総務省調査によると、2008年時点で存在する住宅(住宅ストック)では、戸建ての93%が木造。
鉄筋コンクリート造であれば防音の面でかなりマシになりますが(構造的に自然災害にも強い)やはり価格と手間がネックですかね。もっと普及してリーズナブルになってくれたらいいな。笑
という感じで、日本の住宅事情でアコースティックピアノを買うのはなかなか勇気が必要です。
もちろん、木造住宅での防音室の設計で実績を上げている業者さんもあります。
「空間を余り狭くしない、住宅の防音や薄い遮音構造の木造ピアノ防音室(オルガン、チェロ、ヴァイオリン、ギター、サックス、フルート、キーボード、和楽器、オーディオ等を含む)を構築できるのが大きな特長です。
特に木造住宅では、下地の補強や結露対策および安全な工法・建材の使用により、人に優しい耐久性・遮音効果の高い構造を実現します。戸建住宅など建物に無理な負荷をかけず、適正な工法のもと部屋を狭くしない、費用対効果の高い仕様を工夫します」引用:防音職人
閑話休題。
ハイブリッドピアノ「N1X」のヤバさ
「N1X」は以前販売されていた「N1」の後継機です。
主な違いは以下のとおりです。
- 新しい2つのピアノ音源
- バーチャル・レゾナンス・モデリング(VRM)
- ヘッドホン使用時の音源にバイノーラルサンプリングを搭載
- オーディオファイルの再生/録音機能を搭載
- GPレスポンスダンパーペダル搭載
- 無料アプリ「スマートピアニスト」(iOSに対応)
- Bluetoothオーディオ接続
次にAvantGrand N1Xのデザインとスペック。
機種:AvantGrand N1X
価格:65万円
発売:2019年3月
重量:117kg
スピーカー:6個
アバングランドの魅力をシンプルにまとめ上げたN1X。コンパクトサイズながらも、タッチ感はまさにグランドピアノ
▼以下、HPより引用

アップライトピアノがスマートになったようなデザイン!
その1:「N1X」のコンパクトさがヤバイ
「N1X」は従来の「N3X」「N2」と同様にグランドピアノと同じ鍵盤構造を持ちながら、実は日本の住宅で大半は置物と化しているであろうアップライトピアノよりもコンパクトな設計となっています。
- 幅:1,465mm
- 奥行き:618mm
- 高さ:1,001mm
- 質量: 117kg
日本の狭い住宅ではスペースの確保は死活問題。少しでも小さいほうが良いです。グランドピアノは床がたわむほど重い上に、形がいびつなので無駄にスペースを取ります。
「N3X」も十分コンパクトだけれど、奥行きが1メートルを超えるのでスペースを取る。
その点、「N1X」の省スペース設計は素晴らしい。このサイズであれば問題なく設置できます。とりわけ奥行きが短いのが素晴らしい。
こちらの動画が参考になります。
その2:夜でもガンガン弾けるというヤバさ
「N1X」はアコースティックピアノ特有の弦が張られていません。電子ピアノと同様、音はスピーカーから出るため音量を小さく調整することができるし、なんならヘッドフォンやイヤホン使えば音の心配をしなくて済みます。
それでいて鍵盤がグランドピアノと同等という、突然夜中にグランドピアノを弾き倒したくなるピアノ愛好家には絶好のアイテムです。
例によって日本の住宅は木造が多く、基本的に構造物の質量が物を言う「防音」という点において、防音処理をしていない一般的な部屋は極めて脆弱です。また、鉄筋コンクリート造は木造に比べて基本的な防音性能は高く、特に低音を遮る能力が高いのですが、音の反射を抑えるために吸音材の導入は不可欠です。
アコースティックピアノをガンガン弾きたいのであれば、ヤマハの防音室「アビテックス」の導入や防音工事をするなど、基本的に何かしら対策は必須だと思います。参考までに、6畳間の洋室を夜でもアコースティックピアノが弾ける「浮き床構造」にすると200〜300万円ほどします。
音量を調節できるのは電子ピアノ最大のメリットですね。もちろん鍵盤を弾いたときの振動はするので以下のような制振材(フェルトや高密度ゴムなど)は必須です。
制振材の上にカーペットを敷くと、さらに振動を抑えますしインテリア的にも良い感じになるのでおすすめです。
その3:「N1X」の価格がヤバい
「N1X」の発売価格は65万円です。ヤバイです。高い。知ってはいたけども。少なくとも安くはない。笑
「電子ピアノが欲しい」と思い立って気軽に買える現実的な値段ではありません。え、そうだよね?
が、考え方を変えて「グランドピアノと同じの鍵盤構造」を65万円で買えると捉えるとどうだろう?
N1Xの鍵盤はグランドピアノのそれとほぼ同じ。部屋で少し練習するくらいなら必要十分!
NU1Xは40万円で買えるけれど、鍵盤はアップライト構造なので……やはりグランドピアノの鍵盤とは違う(弦に対するハンマーの角度が異なる)。
ヤマハのグランドピアノが新品で100万円を超えることを考えると、あら不思議。65万円が安く思える。
▼ YAMAHA C3X(グランドピアノの定番モデル)
アップライトピアノが入る一番安いアビテックスでも100万円を超えるし、部屋の防音工事は安くても200万円はする。
65万円のハイブリッドピアノと1万円の制振マットさえ手に入れば、昼夜問わず思う存分ピアノを満喫できるとなれば意外と安いと思わない?

将来的に新品30万円くらいで普及し始めたらいいな、とは思う。
ピアノの置き場所や騒音の悩みがほぼ解決するから、日本全体のピアノのレベルが向上するんじゃないかなあ。
防音室を作るよりよっぽど経済的だしね!笑
今のところ「N1X」は間違いなく最強のグランドピアノ練習機だと思う!
その4:調律のメンテナンスがフリーというヤバさ
普通、アコースティックピアノをまともに弾こうと思ったら最低でも年に1、2回の調律が必要です。
しかし、弦を張っていない「N1X」は調律が不要。これはかなりグッドポイント。調律は安くても1万円前後しますからね。
とは言っても内部の機構は調整が必要かもしれない。埃も溜まるだろうし、鍵盤が木製なので湿気を吸って膨らんだりもするかもしれない。というわけで内部に関してはメンテナンスは必要だと思います。
外装はアコースティックと同じ塗装だと思います。その点の手入れは変わりません。
ちなみに、ピアノの「黒い」塗装は日本発祥です。日本伝統技能「漆塗り」の名残です。漆は除湿に使えます。日本は平均湿度が60~70%と高いので。
▼ YAMAHA ヤマハ ピアノメンテナンス用品 お手入れセット PUOS2
ところで、安価な電子ピアノは鍵盤内部にバネが使われていることが多く(種類による)、しばらく使っているとバネが劣化します。
引用:「キーボードと電子ピアノは似て非なる物」きまぐれ ぷろぐらま語録
このバネが劣化すると弾き心地が著しく悪くなります。とりわけ安価な電子ピアノの鍵盤は「とても小さい音」と「とても大きい音」を再現しにくいです。
対して、「N1X」などのAvantGrandシリーズは、グランドピアノと同じハンマーアクション構造のためバネのような鍵盤の劣化がありません。てこの原理が使われているのが分かります。
鍵盤を弾くとハンマーが動いてピアノの弦に接触します。そのときに指に伝わる微妙な振動(重み)は、従来の電子ピアノでは構造上再現できません。

僕がAvantGrandを推す最大の理由がハンマーアクション!
誰か買ってください(白目)
今回はヤマハのハイブリッドピアノ「N1X」について書いてみました。
記事を書いている時点では発売されておらず、試奏もしていないのでスペック表でしかわかりませんが、きっと売れる商品だと思います。
初年度は限定1000台のみの販売だそうです。
そのうちの1台をいつか手に入れられたら良いなあ、という妄想をしながら今夜も眠りにつきたいと思います。
これからピアノを始めたい人に超おすすめの電子ピアノの話
詳しい記事は下記をどうぞ!
>> 電子ピアノはYAMAHA Pシリーズ P-125がコスパ最強だと思う【初心者にもおすすめ】

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来月発売される #ヤマハ のハイブリッドピアノ「#N1X」がめちゃくちゃ気になるっていう話。#電子ピアノ のキータッチにこだわる人はみんな買っちゃうよねこれ。https://t.co/MvTtGGG5J0— Keigo (@type00k) February 13, 2019
▼YAMAHA AvantGrand N1X
▼ ピアノの歴史
人気記事YAMAHA「HS5」3万円で買える定番・最高のモニタースピーカー
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ディスカッション
コメント一覧
自分もめちゃくちゃN1Xほしいっす!といっても完全趣味の大して上手くもない人間には宝の持ち腐れかもですが。。
子供にピアノ習わせるつもりなので、最初からこれで練習させられたらなあと思ってます^_^子供に買う名目で自分の為に買います笑
N1X、お子さんのピアノの練習にも良いと思いますよ!
生ピアノだと音が大きすぎて、思う存分に練習できなかった記憶があるので……泣
ご購入された際は、ぜひレビューのほどお願いします!笑
私は、旧モデルのN1を持っていました。
赴任先ではN1、実家でグランドピアノを弾いていたのですが、全く違和感無くN1を弾いてました。鍵盤もさる事ながら、スピーカーの配置も絶妙で広がりのある演奏が楽しめます。
今は、実家に戻りましたが、また、次に電子ピアノが必要になったら、間違い無く、N1シリーズを選ぶと思います。
貴重なご意見ありがとうございます。
なかなかレビューが少ないシリーズなので大変参考になります。
想像するだけで欲しくなります。笑
グランドピアノと弾き心地の違和感がほとんどないということで、N1シリーズは普段の練習や録音でも捗りそうですね!
機会があれば、ぜひ手に入れてみたいです。
Keigoさん若いのによくピアノのことを研究されていますね。いろんな書き込みを参考にさせていただいています。私はN1を所有しています。いろいろなデジタルピアノや音源を使ってきましたがこの商品は別格ですね。仰るように最も優れているところは、グランドピアノのハンマーアクションを採用しているので、タッチはほかのデジタルピアノとは次元が違うところでしょう。ヤマハステージピアノCP40も所有していますが、これと比べるとCP40のタッチがおもちゃのように貧弱に感じます。もう一つN1がダントツに優れている点があります。ずばり音源です。N1はCFXでもバイノーラルでもありませんが、出音は大変素晴らしく、生ピアノを弾いている錯覚に陥るほどリアルで心地いいものです。おそらくベロシティのレイヤー数やメモリー容量など公表されていないスペックの部分が他のデジタルピアノと全く違うのでしょう。生グランドが欲しくてGB1Kも銀座の店で何度か試弾しましたが、音の抜け感、ヤマハ独特の高音部でのパキパキきらきらした音色、バーーーんとくる説得力のある低音の音圧感など、N1の方が優れていました。デジタルピアノなのに、生ピアノよりいい音がするという驚愕の「楽器」なのです。自宅の6畳の部屋に設置して子供たちも毎日練習していますが、グランドのタッチと音色で幼少から付き合えるという贅沢なことがこのN1で実現でき、親としては大変満足です。
Keigoさんも購入を迷われているようですが、ローンをしててもすぐにAvanGrandを購入すべきだと強く薦めます。生ピアノは一生ものといいますが、このピアノも30年くらいは愛用できるのではと思います。(デジタルなので修理用の基盤が入手できなくなるまでかな)