こんにちは、Keigo (@type00k) です。
映画「もののけ姫」のエンディングで流れる『アシタカとサン』のコード進行と楽曲分析をしてみる。
僕が最初に「もののけ姫」見たのは5歳くらいだけれど、現在まで毎年見てる映画は「もののけ姫」くらいだと思う。作画・音楽・ストーリーのすべてに魅了されてしまった。
ついでにピアノ演奏 + オーケストラ打ち込みをしてみたので感想も書いてく。
『アシタカとサン』楽曲概要
- 「もののけ姫 サウンドトラック」、31曲目に収録
- 発売:1997年7月2日
- 時間:3分12秒
- 演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
- 作曲:久石譲
- 作詞:麻衣(「久石譲in武道館 〜宮崎アニメと共に歩んだ25年間〜(2008)」より)
- Key of Db Major (変ニ長調)
- BPM:70
『アシタカとサン』のコード進行
Intro.
| Db | Db6(9) | Db6(9) | Db6(9) |
A
| Db6 | Dbmaj7 | Ebm/Db | Db |
| Bbm7 | Gb Db/F | Eb9 Ebm9 | Ebm7 Ab7 |
| Db6 | Dbmaj7 | Ebm/Db | Db |
| Bbm7 | Gb Db/F | Eb9 Ebm7/Ab | Db9 |
B
| Gb | Ab | Gb | Fm7 |
| Gb | Ab | Bbm7 | Cbmaj7 | Ab Gbmaj7/Ab Ebm7/Ab Ab9 |
C(サビ)
| Db | F7 Gb | Ebm7 Gbm7 | Ab |
| Db | F7 Bbm | Fm/Ab Gb | Gb Db/F |
| Ebm7 Gbmaj7/Ab | Ab7 Adim | Gb/Bb | Db |
D
| Gb Ab | F/A Bbm7 | Cbmaj7 | Fsus4 F |
| Gb Ab | F/A Bbm9 | Cbmaj7 | Fsus4 F |
| Db9 | Db9 |
Ending
| Fsus/Gb | F7sus4 | Gbmaj7(9) | Ab6 |
| Db9 | Db9 | Db9 |
原曲はクラシックなのでコードの当てはめが多少こじつけだけれど、できるだけシンプルに書き出してみた。
そういえば小学生のときに、ピアノで弾こうと楽譜を見たらフラットが5つも出てきて、すぐに挫折した覚えがある。
ただ、後々分かることなんだけれど、Db Majorキーはピアノだと逆に弾きやすかったりする。
ピアノソロで弾いてみた
オーケストラ打ち込んでみた
オーケストラ音源ってのが気になったから、初めてEast West「Hollywood Orchestra」を買って打ち込んでみた。
ピアノとグロッケンシュピール、ハープ以外はすべてHollywood Orchestra。
初めてHollywood Orchestraの音を聴いたときは感動した。さすが高いだけある。
打ち込む前にはノートに楽曲のラフ進行や強弱記号など書き込んだ。




適当にCubaseとFinaleで清書。
上の段が主旋律。下の段が和声。中域が聞き取りにくいのは仕方ないので、ベースと主旋律の間を埋める作戦。




ピアノは耳コピというかアドリブというかテキトー。それっぽければ良し。
クラシック和声はピストン・デヴォートで勉強した。




『アシタカとサン』の簡単な楽曲の解説
『アシタカとサン』ジブリの中でも屈指の名曲だと思う。
テーマの「生きろ」を表した楽曲にも聴こえてくる。
ポップスな構成
イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ(Cメロ)、Dメロ、エンディングという日本のポップスで馴染みが深い構成になっている。
動画の尺に合わせて作っている映画音楽だから構成ありき、ではないと思うけれど。
サビのコード進行が美しい
サビ(1:06~)のコード進行が素晴らしい。
Key of C(ハ長調)でも表してみる。
さらにこれをディグリーネームで表してみる。
まず2小節目のノンダイアトニックコード「III7」が強烈。通常はVIに対するドミナントコードだけれど、次のIVに対する偽終止として使っている。偽終止は浮遊感を呼び起こす弱い終止なので意外な印象を与える。
さらに3小節目の「IVm7」もマイナーキーのコードを使っている。いわゆる同主調からの借用和音だ。哀愁漂うイメージ。
サビのメロディーではA音(ラ)とB音(シ)の2音のみがノンダイアトニックで、これも浮遊感がある。
次に6小節目の「III7」以降の進行。コードのルート(ベース)の動きに注目してみる。
Key of Db MajorでF7の後に、
と綺麗に順次進行してる。ベースが滑らかに進行すると美しいメロディが際立つ。ちなみに今度のF7はBbmに対するドミナントコードになっている。
滑らかにコードを繋ぐという意味では、「Fm/Ab」や「Db/F」などの第一転回型を上手く使ってる。ここはクラシック和声。
後半9小節目以降は、II-V進行のVをsus4に、さらにディミニッシュコードでスパイスを加えてIVからIへの変終止でサブドミナントからトニックへ至る。
ちなみに、IVからIへの進行は「アーメン終止(賛美歌の最後の「アーメン」がこの和音で歌われることが多いことから)」とも言われていて、VからIへの全終止に比べると柔らかい印象を与える。ショパンやドビュッシーがよく使っているやつ。
これでけ見ても、サビのコード進行がいかに綺麗に滑らかに繋がっているかが分かる。僕は。
オーケストラとピアノ
この曲はピアノをフィーチャーした楽曲で、優しいイントロから力強いサビに掛けて盛り上がっていく展開が特徴。
しかし、ピアノを支えるオーケストラの存在も欠かせない。
『アシタカとサン』の場合は以下のような楽器編成になってる。
- 木管楽器(ピッコロ、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット)
- 金管楽器(ホルン、トランペット、トロンボーン、チューバ)
- 打楽器(ティンパニ、シンバル、グロッケンシュピール)
- 弦楽器(バイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)
オーケストラは、大きく4つの楽器に分類される。
上記で「ピアノをフィーチャーした楽曲」と書いたけれど、実はピアノはオーケストラの主要楽器ではに。て、あくまでゲスト的な立ち位置(編入楽器)だ。ちなみにハープも編入楽器。
ピアノは音域が広くて和音楽器だから単体としては表現の幅が広い。事実、近現代の楽曲ではピアノを含んだオーケストラも多くある。
しかし、ピアノは他の管弦打楽器に比べて「強弱や奏法で音色の変化に乏しい」という性質もある。ピアノメインの場合は、管弦打楽器が脇役に徹して音量を抑える工夫が必要になる。
『アシタカとサン』の各セクションごとの楽器群の役割はだいたい以下のとおり。
- イントロ(0:00~0:13)
主旋律(メロディ):ピアノ
和音(裏方的):クラリネット、弦(原曲ではパッド) - Aメロ(0:14~1:05)
主旋律:ピアノ
和音:弦 - Bメロ(1:06~1:31)
主旋律:木管 → ピアノ
和音:弦 - サビ(1:32~2:08)
主旋律:ピアノ + チェロ
対旋律:木管
和音:金管、弦 - Dメロ(2:09~2:34)
主旋律:木管 → 弦
和音:木管 → 金管、弦 - エンディング (2:35~3:12)
主旋律:ピアノ、オーボエ
和音:金管、木管
オーケストラでは弦楽器はまるまる一曲ずっと鳴っていても基本的に問題ない。強弱の幅(ダイナミックレンジ)が広くて聴き疲れしにくいからだ。実際にこの楽曲ではDメロ以外は何かしらの弦楽器が演奏されてる。
木管と金管は鳴らしっぱなしというより、和音を構成したり主旋律や対旋律を演奏するなど、ところどころ効果的に使われる。
Dメロ(2:10~2:34)の前半は木管、後半は金管が目立ってる。上の動画では僕はピアノだからDメロ(2:10~2:34)とエンディングの(2:44~2:53)の間はお休み。ぼーっとしてる。
オーケストラのスコア
『アシタカとサン』以外にも『アシタカせっ記』や『旅立ち~西へ』、『東から来た少年』などオーケストラが際立つ名曲だと思う。
個人的には、耳コピだとどうしても限界があるから公式オーケストラスコアが出版されたら嬉しい。出ないと思うけど。
ちなみに今までに出版された久石譲の公式オーケストラスコアは3つある。多分
僕は2冊は持ってる。ハウルも欲しい。




「もののけ姫」より『アシタカとサン』ピアノで弾いてみました。
一緒に合奏してくれる人がいないので、オーケストラは打ち込みで。笑
ここまでカタルシスあるメロディはそう他にないと思う。
「もののけ姫」は良いよ。本当に。https://t.co/rjpprzxcg6#もののけ姫 #ジブリ #久石譲— Keigo (@type00k) October 26, 2018
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というわけで、以上です。読んでいただき、ありがとうございます。
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