【千と千尋の神隠し】久石譲『あの夏へ』のコード進行と楽曲解説

映画「千と千尋の神隠し」を知らない日本人を探すほうが多分難しい。金曜ロードショーで10回以上放送されてきたし何と言っても日本の興行収入1位を長らく守り続けていたのだから(2024年現在は2位。1位は鬼滅の刃)

「千と千尋の神隠し」のサントラはどれも良い曲だけれど、中でも屈指の名曲『あの夏へ』はストーリーと相まって究極エモさが漂っている。20年以上経つのに色褪せなさすぎ。

ということで今回は『あの夏へ』のコード進行と魅力を僕の独断と偏見で紹介する。

Keigo

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楽曲概要

本家はこれ。英語タイトルだと『One Summer’s Day』。

Joe Hisaishi – One Summer’s Day

音楽の担当は久石譲。名曲しか生み出さない日本の宝である。気がついたら義務教育でも扱われ街中でも海外でも久石サウンドが溢れて返っている。

『あの夏へ』は作中だとアバンと千尋がハクのおにぎりを食べるシーンで流れる。

久石譲
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当時のメイキング

サントラ制作に関するメイキング映像があった。貴重すぎ。

楽器の収録にマイクを60本くらい使ったらしい。人も金も掛けすぎ。でもやっぱり本物のホール・楽器の録音の音は良い。

こういうメイキング映像死ぬほど好きだからもっと公式から発表してほしいところ。

『あの夏へ』のコード進行

コード進行は下記。あくまで僕の判断なので参考までに。

千と千尋の神隠し『あの夏へ』コード進行

● イントロ ( Key of C Major )
| Fmaj7 | Em7b13 | Dm7b13 C#m7b9 11 b13 |

● A
| Fmaj7#11 | Fmaj7#11 | Am7add11 | Am7add11 |
| Gsus4 | Fmaj7 | Em7| Dsus4 |
| Fmaj7#11 | G7sus4 | C | C |
| Dm7 | C | Fm7| Gsus4 |

● B
| F E | Am Gm7 C | F E | Am | D7 Gsus4 |

● C(サビ)
| Am Em/G | F C/E | Eb6 Dm7 | Db7add9+11 G7 |
| Am Em/G | F C/E | Cm7/Eb Dm7 | Bb/Db C |
| Fm7 Fm7/Eb | Dm7b5 | G |

● 間奏
| Fmaj7 | Fmaj7 | Em7b13 | D7/F# | D7b13 | Em7b13 |
| Em7 | Fm7/Eb | Am7 |

● B2
| Fmaj7 | C/E | Dm7 | D7 E7 |

● C2(サビ)
| Am Em/G | F C/E | Eb6 Dm7 | Db7add9+11 G7 |
| Am Em/G | F C/E | Cm7/Eb Dm7 | Bb/Db C |
| Fm7 Fm7/Eb | Dm7b5 | G |

● エンディング
| Fmaj7 | G | C | Am | Dm7 | G7b9 13 | C |

「あの夏へ」の楽曲の解説

イントロの独特な響きが特徴的なこの曲。久石譲が多用する4度積みの響きやコードトーン以外のテンションのサウンドが「千と千尋の神隠し」を雰囲気を作っている。

Aセクションの滑らかなコード進行の雰囲気からBセクションの II – V 進行による曲の盛り上げ方は絶妙だ。盛り上がりすぎず下がりすぎず映画の雰囲気を損なわない匙加減、計算が働いている。

しばしば作曲は「空からメロディーが降ってくるんでしょ?」的な表現が使われるけど実際は積み上げてきた経験と緻密な計算が働いていることも多い。

久石譲がベートーヴェン好きだというインタビューや記事は何度も見たことがある。久石譲が「ベートーヴェン交響曲全集」をリリースした2020年のインタビューより引用。

曲が持つエネルギーや、曲をどのレベルで完成していくのか、ということを考えるようになりました。
ベートーヴェンは教会や宮廷などしっかりしたフォームが残っていた時代に、機能和声を人間的な感情表現(長調は明るい、短調は暗いなど)に初めて用いた人ではないでしょうか。
だからこそ、その先に文学と結びついたロマン派の時代が到来する。このフォームと人に訴えかける力のバランスをどう取るか、を考えるきっかけをくれました。

久石 譲さん×沼野雄司さんが語り合う「私の愛するベートーヴェン」

たとえば、モーツァルトはメロディーが次から次へと天から降ってくるマジの天才・奇人タイプだけれど、ベートーヴェンはどちらかというとレンガ一つを積み重ねて巨大な城を作るような努力家タイプだ。

作曲家が音楽を作る過程はたいてい泥臭く、メイキング映像として公開しても金にならないので(今の時代はそうでもないかもしれないが)世に現れることはほとんどない。そもそも取材陣やカメラが入ると集中できそうにない。

実際のところ、長年の研究・経験・試行錯誤の結果、曲として現れることを考えれば「空からメロディー降ってくる」という詩的な表現は、ある意味夢を見させてくれる表現ではある。

サビはマイナーから始まる順次の下降進行。またしてもBセクションからの緩急。綺麗で切ないコード進行。

Am Em/G | F C/E

ここまでのコード進行は少し勉強すれば誰でも思いつくのだけれど、それ以降が天才のテクニック。

Eb6 Dm7 | Dbmaj7add9 Gsus4 G

滑らかに半音下降したハ長調外の代理コードbIIImaj7で雰囲気をガラッと変えつつ、メロディーが同じモチーフを保って最後はGsus4に戻る。

洗練された美しさしかない。音楽に魅了される瞬間。

ピアノソロ

ピアノソロでアレンジした。

難易度は中級くらい。ペダルやテンポ、強弱で曲の雰囲気が大きく変化するので表現が意外と難しい。

ハ長調のわりに代理コードがたくさん出てくるという意味であまり初心者には向かない曲だったりする。とはいえ、自分が好きな曲を練習するのが実は上達の最高効率だったりするので弾きたい人は挑戦するといいかも。

※楽譜販売サイト「Piascore」に移動します

おわりに

久石譲は僕が音楽を始めたきっかけの音楽家でもある。彼が生きるこの時代に生まれて良かったと心の底から思う。

コンサートに行きたいのだけれど海外向けが多かったり国内でも競争が激しくて全然チケットが取れない。辛い。

以下はメンバー限定で『あの夏』へのエモさを解説している動画。

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