先日僕の友人が、
「投資を始めたい。株とか、仮想通貨?とか。だけどそのための経済とか税金とか、正直1ミリも分からない。オススメの本とかある?」
と、質問をしてきた。友人曰く、本屋に「絶対儲かるオススメ投資法!」「貧乏でも幸せに生きる方法!」みたいな地獄のような本が無限に並んであって絶望したらしい。
ということで今回は、僕が今まで読んできた投資や経済、税金に関するオススメの本を独断と偏見に基づいて紹介したい。
お金の話は、カオス
お金の話には、なにかと数字が絡んでくる。
ただでさえ小難しいのに、投資になると政治・経済とも強く関わってくる。前提知識がないとニュースはチンプンカンプンだ。何より門前払い感がスゴイ。
特に政治家や専門家、インフルエンサーたちがお互いに正反対のことを言い争っている姿を見ると、一般人の僕らには結局何が真実なのか、より謎が深まるばかりである。
たとえば「戦争はよくない」なんて誰もが学校で習っているけれど、未だに人類は戦争をしている。言っていることとやっていることが矛盾している。
そこには様々な国の思惑があり、社会制度やビジネス、資源、テクノロジー、保身、歴史、そして政治や経済なども絡んでくる。すべてを把握するのは難しい。
知れば知るほど「自分の意見こそが正しい、正義だ」なんて口が裂けても言えなくなってくる。自分が考えが「所詮、物事の一つの側面でしかない」と気付かされることはしょっちゅうだからだ。
一言で単純に説明できないほど、世界が複雑すぎるのだ。
現代人は、知識と思想が偏りがち
基本的に、情報のソースが一つだけだと知らず知らずのうちに知識や思想が偏っていく。
特に最近の忙しい現代人は詳しく調べる時間がないので、ネットやテレビの議論の「どちらか一方の、論破した感」で物事の正しさを断定しがちだ。一次資料に当たる人は少数だろう。
最近だと上記が典型例の一つだ。コメント欄は地獄が垣間見えて最高に面白い。
全体を通して見ると成田さんが正しい発言をしているように見える。が、冷静に見てみると成田さんは池戸さんのデータと意見を否定していないし(成田さんは「相関と因果が逆かもしれない」と主張しているけれど、逆ではないことを否定できていない。というか「分からない」らしい)特に対案も出さないので議論としては全く深まらない。
ハイパーインフレだの誰も働くなるだの、成田さんの「意味のない仮定の話や言ってもない話(ストローマン論法)を持ち出し相手を困らせ『答えられないのね、ハイ論破』みたいな態度」は、逆に自分がマクロ経済について無知であることを自ら露呈する形になってしまっている。物理や数学と違って、政治や経済はABテストができないので公理の証明など不可能だ(本人も分かって遊んでいるだけかもしれないけれど)。年率12,875%のハイパーインフレは戦争や大災害などの供給能力の破壊が起きないとならないし「需要(欲求)が常にある人間の誰もが働かなくなる架空の世界」など存在しない。そんなことは中学生でも知っている。
アルゴリズムに詳しい成田さんは「社会・経済は複雑だから、分からない」という。いやだからこそ、せめて過去の傾向をお得意のデータ分析した上で「私はこうすると良いと思う」というアルゴリズムの仮説を提唱してほしいところだ。さすがに25年も経済成長率が低いのは原因があるはずでしょう?(僕は緊縮財政だと思っているけど)
「もし明日地球に隕石が衝突したらどうする!?」レベルの話に真面目に答えてもしょうがない。さすがに詭弁すぎる。いや、歯切れは良いからエンタメとしては面白いのかもしれないけれど、真面目に討論を見たい僕からするとオモシロクナイし、ダルい。エンタメ番組の悪い面だ。日本経済の問題の根幹が茶化されてしまう(話題になるのでこれからかもしれないけれど)。
別に絶対に池戸さん信者というわけでもないのだけれど、少なくとも僕はマクロ経済においては池戸さんの意見のほうが正しいと思っている。クルーグマンやスティグリッツも「日本はもっと政府支出すれば経済成長する」と言っている。そもそも、デフレ化の日本で(GDPデフレーターがマイナス)政府支出を増やさずしてGDPが伸びるまともな具体的解決法を聞いたことがない。
結局、大衆は大学名などの肩書や有名人だから・それっぽく聞こえるから正しいという一種の思考停止に陥ってしまっている。
ひろゆきが流行るわけだ。
500年前のコペルニクスやガリレオや150年前のセンメルヴェイス(手洗いの重要性を説いた医者)もこんな感じだったのかな。どんなに正論を訴えても、相手の信念や立場、異なる前提条件、誤ったパラダイムがあるから大衆を納得させられない。
さて、今や僕らはTikTokやインスタ、Twitterなどのインフルエンサーやレコメンド機能でニュースを知ることのほうが多い。わざわざググる(調べる)人は少なくなっている(最近のGoogle検索も精度がアヤシイけど)。
とりわけ投資は、政治・経済など情報も正しく理解しないと、判断を誤ることがある。特に、ノリでお金を出すのは投機(ギャンブル)になってしまうから注意したいところだ。
地獄の多数派が、正義を振りかざす恐怖
そういえば、民主主義の理想は「みんなで話し合って決めること」と学校で習ったけれど、結局は「多数派」が物事を決めるのが現実だ。
たとえ多数派の意見でこの国が地獄へ向かったとしても、それは正義になる。
実際に「20年以上も経済成長しない美しい民主主義国家、日本」を作り上げてしまったのだから、絵空事でもない。地獄の多数派に従っていたら日本の経済成長率のみマイナスになってしまった。
身近なところで言うと、日本の大卒初任給は未だに20万円問題。アメリカは50万円、韓国ですら30万円だから……日本だけ貧乏になっている。地獄でしかない。
参考:OCED「Real minimum wages」
人類の誤ったパラダイム
「なぜ、こうなってしまったのか?」
この疑問が僕が投資をするきっかけになった。日本全体が経済成長しないので、個人で投資をしないと将来が不安だ。
原因を一つに絞ることはできないけれど、要因の一つは「お金(貨幣感)」についての認識を人類が間違えているからだと僕は思っている。
つまり、誤ったパラダイムだ。パラダイムとは、その時代に生きる人々が正しいと信じている思想や常識のことだ。
たとえば500年前のヨーロッパでは「太陽は、地球を中心に回っている」という、いわゆる天動説が当たり前のように信じられていた。彼らにとってのパラダイムだ。
しかし、コペルニクスやガリレオの登場により天動説は否定され、今度は地動説が世間に広まっていく。これがパラダイムシフトだ。
菌やウイルスの概念がない150年前、上記のセンメルヴェイスは「手洗いをしっかりすると産婦の死亡率めっちゃ下がるやん!みんな手洗いしようぜ」と唱えたら「ぷっぷ。そんなわけないやん」「医者である俺様の手が汚いとでも言うのか?」「タオルで拭いたから綺麗なんだが?」と一蹴されたそうな。
昭和の日本では部活動などで「水を飲むとバテやすくなる」「夏に冷房を使うと体が弱くなる」「とにかくランニング」などと指導者に言われていたらしい。しかし、最近では科学的に否定されていることが人々に認知されてきた。有名スポーツ選手も「水を飲まないとパフォーマンスが落ちる」「海外のプロはランニングはあまりしない」など、誤ったパラダイムからの脱却、パラダイムシフトが起こっている。
世の中には誤ったパラダイムが山のように存在し、真実に気が付いた人の発信で長い年月を掛けて少しずつ修正されていく。
そしてもちろん、お金に関してもまた、誤ったパラダイムが存在しているのだ。
常識のアップデートが大切
結論から言うと、お金について人類が勘違いしている代表的なパラダイムは、
- お金は有限である
- 税(国税)は財源確保の手段である
- 金や銀などを担保に政府がお金を発行している
- 消費税は、消費者が支払う間接税である
などが挙げられる。これらはウソである。多くの専門家・有識者・政治家までもが間違えてきた(間違っていないなら25年も経済成長できないことはない)。
過去に間違った発言をしてしまった専門家・有識者・専門家は今更発言覆すこともできなくなっている。負けると仕事を失うので正しい意見を持つ人と討論することも一生ない。だから彼らは、今日も世界にウソをつく。
この誤ったパラダイムを前提にすると、どんな考えに至るのか。
- 子育てにお金を使うために、高齢者の年金を減らせ
→ 国民の選別。全員救える - 保育士や介護師の給料が低いのは、そんな職を選んだお前が悪い
→ 国民の選別。政府が支出を増やせば解決(その程度で過度なインフレにならない) - 政治家と公務員の給料を減らせ
→ ただのルサンチマン。GDPが減るだけ。経済成長したいならむしろ増やすべき - 財政健全化のための増税が必要
→ 通貨発行権と供給能力が十分にあるので財政健全化も増税も不要 - 公務員、俺たちの税金で飯食いやがって
→ 税金ではない。政府の通貨発行か銀行の貸出しによるもの(法律上、税が財源に見えるだけ) - ハイパーインフレになる
→ ならない。年率13,000%以上は日本が戦争で焼け野原にならないと無理 - 政府の借金を返せ
→ 民間の資産が減るだけ。あなたの現金・預金も減る。そもそも日本以外は国債を返済していない - あんなに無駄遣いしてる
→ 誰かの支出は、誰かの所得。結果を見てから「あのときこうすれば!」というのは、いくらでも言える。今は政府の支出が足りていない - 限られた予算を〇〇分野に使え
→ どの産業も大事。どこからイノベーションが起きるか誰にも分からない。政府の選択と集中はNG - インフレ率3.7%超えたから日本は経済成長している
→ コロナと戦争で輸入物価(食料とエネルギー)が上がっただけ。国内需要は牽引していない。なおGDPデフレーターはマイナス - 経済成長しないのはイノベーションが起きないから
→ 政府が支出しないとイノベーションへの投資ができない。Appleなどはアメリカ政府がメチャメチャ支援をしてきた
中学生の教科書や経済の教科書の内容を根底から覆す内容なので、ほぼすべての人には到底受け入れられないと思う。
しかし、それっぽい言葉や理屈、感情、意味のない数字・データに騙されていけない。
実際には、お金は(日本のような自国通貨建て・変動相場制の国は)政府が無限に作り出せるし(供給能力という制約はあるけれど)、税(国税)はインフレ率を調整したり(お金の量を調節する)、格差是正、国家に通貨を流通させるなどの機能があり、政府は国家全体の供給能力(世の中の人が「信用」と呼んでいるもの。定義が不明瞭なので僕は好きじゃない)を担保に通貨を発行している。
さて、このブログでは政治について語るわけではないので、お金の話に戻す(どうしても政治経済に結びついてしまうけれど)。
だからまず優先して勉強するべきは、「お金(貨幣)」についての正しい理解だ。貨幣感を間違えるとたいていの判断を間違える。パラダイムシフトしよう。
お金とは、
- 誰かの貸し借りの記録
- 「政府の通貨発行(国債)」と「銀行の貸出し」によって、世の中に誕生する
- 政府の徴税によって、世の中から消える
- 政府の負債 = 民間の資産
- 政府の負債は、国家滅亡の日まで増え続けるもの
- (ちなみに消費税は、事業者に対する直接税。裁判の判決が出ている)
といった、単なる事実(僕の意見ではない)と、その仕組み・プロセスを知ることが大切になる。できれば他人に説明・言語化できるレベルになるのが望ましい。
お金の仕組みが理解できると、経済ニュースや投資の分野もすんなり分かることが多い。
ただ、お金について独学するには少し厄介なジャンルではある。正直どう勉強するべきかもイマイチ体系化していない。経済学部に入り直したところで得られる知識もたかが知れている。何よりコスパが悪すぎる。
だから結局、様々な情報が飛び交う現代では複数の情報のソースと比較して、自分の頭で考えることが「必須」になってくる。もちろん盲信するのもよくないから、毛嫌いせずに様々な意見を謙虚に聞き比べる姿勢も大切だ。
何度も言うけれどお金の話はカオスだし、初見では受け入れられないことのほうが多い。パラダイムからの脱却には時間が掛かるのだ。
一度にすべてを理解しようとせず、少しずつ常識をアップデートしていく感覚が大切。
オススメの本10選
前置きが長くなってしまった。
以下、僕が読んで本の中で、比較的分かりやすかったオススメの入門書だ。難しい本は省いた。
【金融・経済】誰も教えてくれないお金と経済のしくみ
個人的には入門書としては一番オススメ。身の回りのお金から国家レベルのお金までを網羅的に解説している本。豊富なデータを使っていて客観的な知識として学ぶことができる。著者の主観はあえて抑えられている。
中学生でも読みやすい文章なので義務教育でも使えるレベルだと思う。僕が初学者だったらこれを最初に読みたい。
というか、森永康平さんの本はメチャメチャ分かりやすいので正直全部オススメ。
【経済】東大生が日本を100人の島に例えたら面白いほど経済がわかった!
経済の話はスケールがデカすぎて分かりづらい。だから日本を100人の島で例えてみよう、という本。可愛いイラストや図解が多いので小学生でも理解できると思う。
話をシンプルにすることで「金利」や「国債」「為替」「インフレ」という用語も理解できるようになっている。
レビューを見る限りだと子供でも理解できているので、知識ゼロの人にもオススメ。
【経済】目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】
平成の日本が経済成長しなかった理由(緊縮財政)を教えてくれる本。上記の本よりは難易度が上がるけれど、用語も丁寧に解説してくれるので経済ニュースがより分かりやすくなる。お金とは何か?がよく分かる。
シリーズになっているので興味があれば順番に読むと面白い。
【地政学】13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海
地球儀を俯瞰して見ることで、世界中の国の特徴と政治的パワーバランスなどを教えてくれる本。経済に直結する「地政学」というジャンルの本。
僕は高校の頃は地理Bを取っていたが「こういう土地・風土だから、経済や政治判断がこうなるよね」とは教わらなかったから、読んでいて新鮮だった。わりと知っていることも多かったけれど。
小説っぽくて読みやすい。確かに13歳なら読める。
【税金】お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!
「経費」「節税」「確定申告」とは何か?を知りたい人が最初に読むといい本。納税は国民の義務なので「知らない」では済まされない。
一生使える知識なので学生や会社員にもオススメ。
【投資・節約】本当の自由を手に入れるお金の大学
お金を「貯める・稼ぐ・増やす・守る・使う」の視点で解説してくれる本。YouTubeのインフルエンサーとして有名な方の本。
基本的な知識の解説が多いけれど、大事なことが多い。一読する価値はある。
【お金の正体】日本人が本当は知らないお金の話
お金の成り立ちと正体について学べる本。お金が「ただの貸し借りの記録」だと理解できると今の経済ニュースがよく見えてくる。
ちなみに僕は三橋さんのブログを毎日読んでいる。
スッキリわかる 日商簿記3級 テキスト&問題集
会社の貸借対照表や損益計算書、決算書の見方が分かるようになる本。いわゆる簿記。
正直、「複式簿記」の概念が理解できないと、お金の正体を理解できないから簿記3級くらいは勉強しておいて損はない。
【暗号資産】マンガでわかるブロックチェーンのトリセツ
暗号資産(仮想通貨)支える「ブロックチェーン」という技術をマンガでわかりやすく解説してくれる本。
プログラミングがさっぱりな人でも、データの改ざんが不能というブロックチェーンの仕組みと活用のされ方をざっくり理解できる。
【株式投資】「会社四季報」業界地図
国内外の会社を業界別で分かりやすくまとめてある本。業界ごとの覇権・出資状況が図鑑のようにまとまっている。僕は高校生の頃から読んでいる。
2023年度版は新規注目業界として「メタバース」「脱炭素」「ESG」などの最新テーマも取り扱っている。
まとめ
投資をするなら経済と金融、政治の話も大事になってくる。
ただ、そもそも「お金」について人類は勘違いをしてきた歴史がある。だからそれを紐解くのが先だ。
それと、少しずつお金の真実に近づいているとはいえ、将来の人類から見れば僕もまだ勘違いや知識不足がある。だから、すべてを鵜呑みにせず、まずは自分の頭で考えてほしい。考えて行動し続けることでしかお金は守れない。
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