そう、半年だ。コーヒーをぶちまけたせいで買い替えを余儀なくされたパソコンのキーボードを探し始めてから、既に半年が経過している。新しい楽器に挑戦したら人前で弾けるレベルになるくらいの期間だろう。

あれこれ思考の迷路をさまよった末に「フラッグシップを買えば全て解決するのではないか」という、なんとも安直な発想が頭をよぎった。金の暴力でキーボード探しに終止符を打つ戦術。あるいは思考停止という名の悟りである。
ということで今回は最高級メカニカル75%キーボードKeychron K2 Maxを買って使った感想を僕の独断と偏見で紹介する。
キーボードの選定条件が多すぎる問題


改めて、僕がキーボードに求めている要素は以下のとおりだ。
- メカニカル(茶軸の心地よい抵抗感)
- 75%サイズ(効率性と機能性の絶妙なバランス)
- 英語配列(プログラミングで使いやすい)
- クロスプラットフォーム対応(Windows/Mac/Linuxに対応)
- 無線2.5Ghzに対応(Bluetoothは遅延が大きいのでNG。Bluetoothの遅延は約7~20ms、2.5GHzは約1ms)
- 有線と無線をワンタッチで切り替え可能
- ファンクションキーがある
- 右上ホイールは要らない(謎の流行り。すぐに役立つものはすぐに役立たなくなって消え去るので不要)
- シンプルなデザイン(無駄な装飾、ぴかぴか要らない)
探してみたら意外と選定条件多かった。いやでも毎日10時間以上はキーボードを使っているからさすがに妥協したくない。身の回りはお気に入りだけで固めたい。
いや、そもそも英語配列に限定するだけでも数が絞られてしまう。さらに無線2.5GHz対応ともなると海外メーカーの場合は日本の技適マークの法律に対応する必要がある。なんだかんだで候補は数えるほどしかなくなるのだ。
ということが発覚したのが前回の記事の内容だ。


選ばれたのは、Keychron K2 MAX


最終的に買ったのはKeychron K2 Max(キークロン)。僕が欲しい条件全てを満たす最高級のメカニカル75%キーボードだ。香港製のド定番シリーズの最新機種である。
- 75%サイズのメカニカルキーボード(84キー)
- 接続方式:有線USB-C、無線2.4GHz、Bluetooth 5.1
- 対応OS:Windows / Mac / Linux
- バッテリー容量:4000mAh(バックライトオフで最大240時間)
- キースイッチ:Keychron独自のスーパーメカニカルスイッチ
- キーキャップ:ダブルショットPBT
- フレーム素材:ABSまたはABS+アルミフレーム
- 重量:約1.5kg
- 発売:2025年2月
商品名の「K2」は75%キーボードを意味していて「Max」は無線2.5GHz対応を意味する。いやネーミングが分かりづらい。iPhone 16 Proくらいシンプルにしてくれ。
さらに、iPhoneのように複数の仕様バリエーションが存在する。
- フレーム素材(プラスチック/アルミ)
- キーの軸(赤/茶/バナナ)
- バックライト(白/カラー)
僕が選んだのは「茶軸」「カラーバックライト」「アルミフレーム」という最上位スペック。いや正確には茶軸とアルミフレームを選ぶとバックライトはカラーしか選べなかった。ぴかぴか要らないからその分安くしてほしい。


元箱もそれなりに高級感が漂っている。なんかちょっと重いぞ。




そして気になるお値段は、25,000円。コーヒーをぶちまけた2,000円の激安バッファローキーボードの12.5倍という破格の金額である。
これでクソだったらさすがに過去に戻って助走つけて自分を殴りたいくらいの出費である。
第一印象は、キーボード界のランボルギーニ


僕はキーボードに詳しくない。つい半年前まで有名どころの商品や定番メーカーすらも知らなかったんだけれど、Keychron K2 Maxをひと目見て、「あ、これランボルギーニじゃん」と支離滅裂すぎる第一声が出た。ランボルギーニに乗ったことないじゃん。
良い点①:洗練されたシンプルなデザイン


開封して一目見てわかった。芸術品、とまでは言わないが、めちゃくちゃ品質が良い。均一に美しく配置されたキー、360度どの角度から見ても狂いのない造形だ。完璧じゃん。


触った瞬間の重みは想像を超えていて「そうだ、このフレームの素材はアルミだった」と重量感が脳を刺激する。重さ1.5kg。MacBook Proより重いのだ。
コンパクトで掴みやすく戦場の投石としても使えそうだ。ずっしりと頑丈で安っぽさは微塵もない。ジャケットの裏にでも仕込んでおけば9mmの銃弾程度は防げると思われる。


キーも交換できる仕様になっている。好みに合わせることができるが、僕は面倒なのでやらないと思う。結局デフォルトでいいや、ってなりがち。
良い点②:入力切り替えが実用的な配置


PCとの接続方法は、
- 有線USB-C
- 無線2.5GHz
- Bluetooth
に対応している。切り替えスイッチは左側に直感的にまとまっている。
特に2.5GHzに対応しているのが最高だ。あるべき実装になっていると、言うことがなくなる。普通を極めている。
僕は基本的には一番安定する有線を使う予定。OSを切り替えるときは無線2.5GHzを使う方針。
良い点③:裏目まで、ちゃんと良い感じ
「メカニカルキーボードに高さがある分、手首が疲れる」という一般的な懸念点についても、僕は1ミリも感じていない。個人差というやつだろう。あるいは僕の感覚がすでに麻痺しているのかもしれないが。




裏側も余計なごちゃつきもなくシンプルなデザイン。キーボードの高さは2段階で調整できる。グランドピアノの蓋と同じだ。僕は全開にしている。


余談だが、キーボードと手首の高さを調整するアイテムとして「パームレスト」がある。


ただそれは「だったら初めから薄いキーボードを買えばいいじゃん」という本末転倒を指摘する囁きが聞こえるので、僕は買わない。
ただでさえ25,000円を支出しているのに、武器にすらならないただの板にさらに数千円を掛けるはさすがに無駄遣いとしか言いようがない。大戸屋でランチを食べるほうがマシだ。
音も良い、たぶん
個人的にはどうでもいいけど、打鍵音も良いんじゃないかな。カタカタっていう。普段イヤホンしているから聞こえないけど。
とはいえ、いくら打鍵音が良くても収入が上がるわけでも健康に良いわけでもモテるわけでもない。大きく見積もってもドライヤーからマイナスイオンが出るくらいの価値しか感じないので個人的に本当にどうでもいい評価要素である。存在しない価値を巧みに演出して消費者にゴミを買わせる株主資本主義の悪い構造が顕在化している。
どうでもいい打鍵音を聞くくらいなら久石譲の曲を聴くほうがよっぽど幸せだ。
気になった点:ランボルギーニの日常使い問題
ランボルギーニはカッコいい。しかし日常生活での使い勝手となると疑問符がつくだろう。小回りは効かず燃費も悪いからだ(そもそも用途が違う)。
Keychron K2 Maxを2ヶ月使った結果、同じようなことが言えそうだ。気になったのは以下の4つ。
- ストロークが長い。ゆえに文字を打つスピードが落ちた(エネルギーを消耗する)
- 印字が光らないから結局見えない
- 電池がリチウムイオンバッテリー
- 一番右側の列は必要か?誤タイプはするか?
致命的なマイナスポイントでもないけれど、あくまで気になった点に言及する。
気になった点①:ストロークが長すぎて、指が旅行する


Keychron K2 Maxはキーを底まで押し込む距離が予想以上に長い。MacBookのような滑らかな連続タイピングは難しく、一つひとつ気持ちを込めてキーを押し込む意識が必要だ。タイピングスピードも明らかに落ちて誤打率も高まった。バックスペースすら誤打する始末なのでエネルギーを消耗しがちだ。燃費が悪すぎる。慣れるのか?
理論上はKeychron K2 Maxは底まで押し込まなくても入力は成立する。しかし途中で指を離すこと自体も疲れる。僕は底まで押し込む感覚は必要不可欠だ。これは僕の性格の問題かもしれない。中途半端が嫌いだから。
理想はキーの底までの距離が数ミリ短いほうがいい。当然だがラピッドトリガーにすればいい、とかそういうことじゃない。
キーの規格の問題かもしれない。ならばキーキャップを変えれば改善するかだろうか。いや、それはそれで面倒くさいからやらないだろうな。PCのキーボードにそこまで熱心でもない。
となると、手や指の大きさの問題かもしれない。身体の成長期は過ぎてしまったはずだが一応プロテインは買い足すとして様子を見ておきたい。
確実な解決策としては、キーボード全体が薄いロープロファイルにすることだろう。


しかし以前試したときにロープロファイルは打ち心地が全く好みではなかったから却下。隙間にゴミが溜まりそうなデザインも好きではない。うーん難しい。
いや、この問題はKeychron K2 Max固有というよりもメカニカルキーボード全般の特性かもしれない。とはいえ2ヶ月使っても慣れないところを見ると、これはもはや僕の体質の問題かもしれない。アレルギーは特にないはずなんだけどな。
ただでさえKeychron K2 Maxに25,000円も出して買ったのに、さらに自分に合うかも分からないキーキャップへの追加投資はリスクが高い。合わなければサンクコストが積み上がるだけだ。無駄な投資を重ねる愚行は避けたい。
そもそも数あるキーボードからKeychron K2 Maxを探して買うまで半年以上も時間を投じている。時は金なりだからこれ以上の時間の損失も避けたい。人間の寿命は短いのだから。
気になった点②:バックライトの意味がない


Keychron K2 Maxのバックライトはあくまでキー下の部分しか光らない。ワイルドスピードの車のイルミネーションのような見た目だ。
つまり、見た目は派手だが実用性がない。
MacBookのように印字部分が光るわけではないから「部屋が暗くてもキーが判別できる」という本来のメリットが全く活かされていない。


キートップが光らないと意味をなさないわけで。キーを認識するためだけに部屋の明かりを付けるという毎日意味もないストレスが発生する。
意味がないどころか初期設定だとキーを打つごとにバックライトが光散らしてストレスがマッハである。手元がチラチラして目の前の作業に集中したいのに全く集中できず目障りでしかない。闇を照らすはずの光が、もはやマイナスでしかない。
僕はKeychron K2 Maxが届いた初日にバックライトをオフにした。ストレスで将来禿げたくない。未来の僕が見たらこの選択は人生史上最も賢明な判断になるのかもしれない。


この問題もキーキャップで解決するのだろうか?印字部分が光を通せばMacBookと同じ仕様になりそうだから。実現可能かは調査できていないので知らない。いや多分、構造的に無理な気がするな。
まあ。幸い僕は中学のときにブライドタッチを習得したので実際には見えなくても特に問題はないけれど。しかしそれでも「暗闇で作業する」というあり方をこのキーボードは否定しているようにも感じる。さすがに考えすぎか。
欠点のように見えるが、バックライトがなくてもいい僕としては、評価点はマイナスにはならない。ただ、人によっては致命的なのかもしれない。
気になった点③:リチウムイオンバッテリーは2年でゴミ
前回も書いたけれど、スマホでお馴染みのリチウムイオンバッテリーは2年でゴミになる。たとえばiPhoneの交換には分解が必要で専門知識が問われる。少なくともポン付けできない。以前やったことがあるが、もうやりたくない。ストレスで禿げる。
Keychron K2 Maxも同様だ。有線で運用し続けたとしても、2、3年で無線機能は使い物にならなくなる気がしてならない。
だからせめてHHKBのように電池式にしといてほしい。


スマホの普及によって全人類があまりにもリチウムイオンバッテリーに慣れてしまった。充電式電池を部屋に常備している人類は、今や選挙に行く有権者よりも少ないのだろう。
経済の基本は需要と供給だから、充電式電池キーボードのラインナップは今後も増えないだろう。
気になった点④:一番右側の列は必要か?誤タイプはするか?


75%サイズのメカニカルキーボードで、テンキーと編集キーなしという仕様を満たすためには、右側の列が必要になる。これは右矢印キーがはみ出す構造的問題に起因する。
結論から言うと、必要ないが仕様上は必須で、誤タイプの原因となっている。




Keychron K2 Maxを実際に使ってみて、やはり右側の一列は要らないな、と思いつつ、仕様を満たす上では必要だ。標準配列がいいから、こればかりは慣れるしかない。


Keychron K2 Maxの誤タイプについては、毎日触るMacBookに慣れているせいで、未だに慣れない。キーボードの一番右側は、本来はエンターや右矢印キーであってほしい。理想はそうだけど、上でも言ったように仕様上仕方がない。
これは欠点というか、QWERTY配列の仕様上の話なので、Keychron K2 Maxの弱点には入らない気がする。
まとめ:総合点で99点。ベストではないけど、ほぼ理想


Keychron K2 Maxは、打ち心地、質感、機能性を総合的に評価すると99点。限りなく普通を極めた素晴らしいキーボードだ。今後より良いキーボードが出るかもしれない、というポジティブな意味でマイナス1点としておく。実質満点。
今のメイド・イン・チャイナは普通にすごい
Keychonは香港製。一昔前の日本人はMade in Chinaという表記だけで品質を馬鹿にする傾向があった。しかしGDP差が約5倍にまで開いた2025年現在、ニッチなキーボード市場でさえ地道に改善を続けて品質は非常に高い水準にある(個人的には音楽だとイヤホン界隈もChinaメーカーが熱かったりもする)
Keychron K2 Maxの気になる点も、キーキャップの交換や慣れで解決できる問題ではあるから商品自体に文句があるわけではない。特に75%サイズ、メカニカルスイッチ、英語配列、2.5GHz無線接続という4つの条件を満たすキーボードとしては市場における数少ない選択肢の一つである。
特に2.5GHz付きは現状だと選択肢が少ない。今後いろいろなメーカーから競合製品が増えてきそうではある。
向いている人、向いていない人
Keychron K2 Maxが向いている人はこんな感じだと思う。
✅こんな人におすすめ
- キーボードの品質と耐久性を最重視する人
- 75%サイズの使いやすさを求める人
- 複数デバイスでの切り替えや無線2.4GHzの低遅延を重視する人
❌こんな人には向かないかも
- 長時間の高速タイピングをする人
- 暗い環境での視認性を重視する人
- MacBookのような薄型キーボードに慣れている人
正直、コスパが良いかは分からない。25,000円のキーボードは通常の人類にとってはあまりにも高すぎる。やれることは2千円のキーボードと何ら変わりないのだから。
都市圏住みであれば家電屋の試し打ちで事前に確認できるが、そうでない場合はギャンブルになる。お財布と相談したいところ。
製品の良さ × 自分との相性 = 満足度


あとは僕との相性だけ。Keychron K2 Maxは耐久性も高そうだし壊れる気配もなさそう。あとはコーヒーをぶちまけないように気をつけて飲むことくらいだ。
今回のキーボード選びでわかったことは、結局買って使ってみないとわからないということ。店でちょっと触ったくらいでは判断できない。普段の自分の使用環境や姿勢との相性を見極める必要がある。単純だけど真理。
とはいえ現時点でKeychron K2 Maxより納得できる良いキーボードは他にないから必要経費として割り切っている。今後メインとして使い続けようと思う。サブはないからコーヒーだけ気をつけたい。
終わり😊




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